カイリー・アービング

「ファンの盛り上がりを見るのは気分が良いものだ」

マーベリックスのホームで行われたプレーオフのファーストラウンド第6戦。前半はマブスが先行し、クリッパーズが追い付く形での52-52の同点だった。ルカ・ドンチッチが前半だけで18得点7アシストを記録した一方で、カイリー・アービングはフィールドゴール6本中成功わずか1本の2得点と低調だった。

それでもカイリーは落ち着いていた。ハーフタイムの心境を彼はこう振り返る。「声を掛け合う必要はなかった。同点だったから普通なら多くのコミュニケーションを取らなきゃいけないところだけど、良いプレーができている感覚があった。僕も状態は悪くなかったから、後半は激しく守って、チームメートのためにイージーシュートのチャンスを作ろうと考えていた」

ドンチッチはカイリーに特に声を掛けることはなかったが、前半から彼のボールタッチを意図的に増やしてリズムをつかむきっかけを与えようとしていた。そして後半最初のポゼッション、相手の注意を引き付けたドンチッチのアシストからのイージーシュートが決まったことで、カイリーは波に乗った。第3クォーターに13得点、第4クォーターに15得点とエンジン全開。マブスは第3クォーターに15点のリードを奪うと、終盤も危なげなく乗り切って4勝2敗でのシリーズ突破を決めた。

ドンチッチは「カイ(カイリー)はアンビリーバブルだよ。彼のような選手が自分のチームにいるのは喜ばしいね」と笑顔を見せた。カイリーは「ルカと一緒だとどんなプレーも簡単になる」と語り、「僕らは一つのチーム。勝つにしても負けるにしても一緒なんだ」と続けた。

左右に揺さぶるスピードの速さ、全くブレないハンドリング、わずかなギャップを見逃さないシュートセンス。カイリーは彼の代名詞である天才的なオフェンスはもちろん、よく走り、ディフェンスでもタフに戦って、執拗にボールに手を伸ばして相手を苦しめた。

第4クォーター残り5分半、カイリーはクロスオーバーでマークに付くPJ・タッカーを右往左往させた末に、ファウルを受けながらコーナースリーをねじ込んだ。マブスのベンチ前での4点プレーで、カイリーは仲間に揉みくちゃにされ、アメリカン・エアラインズ・センターの観客は総立ちとなって大歓声を上げた。

「フロアからシュートが決まるのを見届けて、チームメートに祝福されるのは楽しい。あれがシリーズを決める一撃になるのは分かっていたよ」とカイリーは言う。残り5分半で106-82。まだ両チームとも主力がコートに残っていたが、クリッパーズの闘志は失われていた。

カイリーは昨シーズンの2月にネッツからマブスに加わるも、プレーオフ進出を逃す結果となった。そのことで批判も浴びたが、今のカイリーはメディアやファンと敵対するのを止め、プレーに集中して結果を出している。

「ファンの盛り上がりを見るのは気分が良いものだ。僕らのバスケが評価されるのはありがたいし、そのおかげでリラックスしてプレーできる。僕たちのプレーが上手くいっている時もそうでない時も、彼らはできる限りのエネルギーを与えようとしてくれる。他のチームのファンも見てきたけど、ここのファンは良いバランスが保たれていると思う。みんな自分たちの選手をサポートしたいと考えていてくれるんだ」

カンファレンスセミファイナルではサンダーと対戦する。第1シードで勢いのあるチームが相手となるが、指揮官ジェイソン・キッドは「楽しむだけだ」と語った。