高田静

初戦でエースの江村優有が戦線離脱、3人での戦いに

3人制バスケットボール3×3のパリオリンピック出場権を懸けたユニバーサリティオリンピック予選2(UOQT2)を戦う3×3女子日本代表は、大会初日に行われた2試合に連勝した。それはチームを襲ったアクシデントを乗り越えてのものだった。

初戦の相手はオーストリア。序盤は相手の高さにやられて先行を許すも、機動力を生かしたディフェンスで相手の勢いを止め、出足で一歩先んじることで相手のファウルを引き出して流れを変える。攻守にアグレッシブだったのは江村優有で、サイズはなくても足を使って相手に食らい付き、相手の攻撃を組み立てさせない。攻めに転じれば一瞬のスピードで相手を抜き去って得点を重ねるエースの働きで会場を沸かせた。

その江村のディープツー、さらには体勢を低くしたドライブでオーストリアの大柄な選手2人の間を抜き去り、ヘルプに入った選手より一瞬早くレイアップを決める『3人抜き』で12-12と追い付き、その後は日本がリードする展開に。残り1分半、17-15とリードして相手がファウルトラブルと日本は優位を固めつつあったが、ここでルーズボールに飛び込んだ江村がそのままコートに倒れる。左膝を押さえて痛がる江村は立つことができず、そのままスタッフに抱えられてコートを離れた。

日本は残り時間をしぶとく守り、最後は高田静のレイアップがこぼれたところに走り込んだ宮下希保がタップで押し込み、21-15のノックアウト勝利を収めた。

しかし江村は戦線離脱して、ここからは3人での戦いを強いられることに。勝っても高田に笑顔はなく、「江村が点を取る場面が多かったので痛いですが、引きずることなく切り替えて、江村が取っていた得点の分は全員で守って、守るべきところを明確にして日本らしいバスケをやっていきたい」と語った。

宮下希保

3人で死闘を制す「ホームの応援に助けられました」

それから約2時間後に迎えたドイツ戦。日本は高田の言葉通り、序盤から激しいディフェンスを徹底し、相手にイージーシュートの機会を与えない。高さのある相手にゴール下でも食い下がり、リバウンドでも引けを取らなかった。一方で江村不在で得点力の低下は否めない。宮下と中田珠未はディフェンスとリバウンドの選手で、オフェンスのクリエイトは高田が一手に担うことになったが、休みなく攻守にハードワークすることで消耗は激しく、高田の武器であるドライブのキレは衰えなくても、シュートが入らなくなっていく。

オーストリア戦とは打って変わってロースコアの展開は心身ともに疲弊するもので、試合中盤からはどの選手も肩で息をする状態に。それでも何とか足を動かしてディフェンスし続け、さらに無用なファウルをしないことで均衡を保ち続けた。

一方のドイツは疲労の溜まった終盤、日本の攻めをファウルで止めてしまう。中田が気力を振り絞って繰り出すリムアタックで、高田が相手の手にボールを引っ掛けられながらも強引に持ち込むドライブでとドイツからファウルを引き出し、フリースローで貴重な得点を重ねていった。13-12と1点差に迫られてからのラスト30秒を守り抜き、最後は宮下がボールを抱え込んで守ってタイムアップのブザー。強豪ドイツに勝ちきり、日本が2連勝を挙げた。

宮下は「大丈夫かなって不安はあったんですけど、お姉さん方 2人がずっと鼓舞してくれて、試合前も試合中も声を出し続けてくれたので、それが最後まであきらめなかったことに繋がったと思います」と語る。「点数が取れない分、ディフェンスで身体を張るしかない。あとは3人で戦う中で相手のビッグマンを抑えるところを中田さんとシェアして、試合中にマッチアップを変えて相手の軸となる選手を交代交代で守って体力をコントロールしていました」

試合終了から10分ほどが経過していたが、取材に応じる宮下の呼吸は荒いままで、その消耗ぶりを感じさせた。その中で気持ちを奮い立たせることができたのはホームの歓声に後押しされたことで「本当に助けられました」と宮下は言う。

今日のエジプト戦、明日の最終日も3人で戦うことになるが、宮下は「日本でできる機会はなかなかないので、楽しんでもらいたい気持ちがあります」と語る。「そのためには自分たちも楽しくバスケをしている姿を見せることが必要で、やっぱり楽しくバスケをやっていると身体も自然と動くようになるので。そこで勝つことも大事なんですけど、バスケを楽しんでもらう、魅力を感じてもらえるようにもっと頑張りたいと思います」