勢いだけのチームではない『芯の強さ』を示す
サンダーはペリカンズとのファーストラウンドを4連勝で制しました。第1シードが第8シードをスウィープするのは驚きではなく、サンダーが若さの勢いで圧倒したようにも見えます。しかし、実際には大いに苦しんだ中での4連勝であり、勢いだけのチームではない芯の強さが光った4連勝でした。
ペリカンズはディフェンス力が自慢のチームで、MVP候補にノミネートされたシェイ・ギルジャス・アレクサンダーがハーブ・ジョーンズの徹底したマークに苦しめられるなど、シーズン平均が120.1だったサンダーの得点は105.3点に抑え込まれました。自慢のオフェンス力を存分に発揮できたのは第2戦のみ。他は接戦が繰り広げられました。その一方で4試合通じてペリカンズが奪ったリードは最大で7点と、サンダーが試合の主導権を譲ることはありませんでした。
大きなケガに見舞われることはなかったものの、第3戦ではジェイレン・ウィリアムズが目を痛めて一時離脱し、第4戦ではシェイが足を痛めて一時離脱するなど、ところどころでハプニングが発生しました。この時間帯に起用されたケイソン・ウォレスは、ルーキーとは思えない落ち着きぶりと主役の代役として結果を出し、チームの危機を表面化させませんでした。
チェット・ホルムグレンはフィジカルの差でヨナス・バランチュナスのパワープレーに苦しみましたが、決められても果敢に向かっていき、オフェンスで取り返すメンタリティを見せました。また、普段はローテーションから外れることもある2年目のジェイリン・ウィリアムズがバランチュナス対策として起用されると、フィジカルな対応とヘルプでディフェンス面で貢献するだけでなく、3ポイントシュートを高確率で沈めて期待に応えました。
思うような展開にならなくても焦ることはなく、トラブルが起きてもベンチメンバーが自分の役割をこなしてカバーしていく様子は、熟成されたベテランチームと錯覚してしまうものでした。何よりレフリーのコールに納得がいかずクレームばかりしているベテランと違い、納得がいかなくても目の前の相手に集中して『大人のチーム』らしい戦いぶりを見せていました。
ルーゲンツ・ドートがブランドン・イングラムを封じ込めエースキラーっぷりを遺憾なく発揮しましたが、6人が平均9得点以上を奪ったペリカンズのバランスアタックを抑え込むためには、すべてのマッチアップでハードなディフェンスを実行する必要がありました。誰一人として手を抜くことも、プレーオフの試合にビビることも舞い上がることもなく、ハードワークし続けたのです。
ペリカンズのディフェンスはシェイやジェイレンへの警戒を強め、シュート力に懸念があるジョシュ・ギディーとドートを空ける戦略を取ってきましたが、この2人が揃って50%を超える成功率で3ポイントシュートを決めました。彼らが大舞台に臆することなく、ステップアップしたこともスウィープの大きな要因でした。
第2戦を除いて、やりたいことがやれて圧倒したわけではなく、幾度となく苦しい展開が訪れながら、サンダーのメンタリティが揺らぐことはありませんでした。ジリジリとした試合展開でも淡々と落ち着いてプレーし、全員が自らの役割を果たし、勝利に必要なステップアップを繰り返したのです。スターターの平均年齢が23歳の若きチームながら、優勝経験豊富なベテランチームのような戦いぶりが光ったスウィープでした。