久保田義章

リッチマンHC「負けたら順位が下がる逆境を打破した選手を本当に誇りに思います」

4月21日、シーホース三河はアウェーで川崎ブレイブサンダースと対戦。前日は65-69とオフェンスが沈黙したが、この日は本来の爆発力を取り戻し97-81と快勝した。

この試合、三河は前日のダバンテ・ガードナーからザック・オーガストに先発を変更した。パワーが持ち味のガードナーから機動力のあるオーガストとなったことで生まれた速さのアドバンテージを生かし、アップテンポな流れから3ポイントシュートを積極的に狙うオフェンスで確率良くシュートを決めて得点を量産していく。だが、川崎も7本中5本成功と、驚異的な高確率で長距離砲を沈めることで、第1クォーターは川崎の27-25と点の取り合いとなる。そのまま互いに譲らず、前半は三河の49-46と僅差で終える。

第3クォーターの立ち上がり、三河は前半と同じくスピードの優位性を生かしたオーガストの速攻、久保田義章やジェイク・レイマンの長距離砲などによる猛攻で65-51と一気にリードを拡大。だが、藤井祐眞に連続3ポイントを許し、ロスコ・アレンのインサイドアタックで失点となかなか突き放せなかった。しかし、第4クォーターに入ると、三河はディフェンスで大きく流れを引き寄せる。その象徴となったのが長野誠史だ。篠山竜青のドライブの進路にうまく入って、4点リードで迎えた残り7分半から2ポゼッション連続でオフェンスファウルを誘発。ライアン・リッチマンヘッドコーチが、「長野は本当に大きな2つのチャージをとってくれました。そこから私たちは大きなランを繰り出すことができました」と振り返ったこのビッグプレーなど、足をよく動かし激しいプレッシャーをかけ続けた。

川崎にオフェンスリバウンドを多く取られたが、集中力を切らさないことで失点を抑えると、攻めてはガードナーが第4クォーターだけで12得点と大暴れ。その結果、76-72から17-4のビッグランを繰り出すことで川崎を圧倒した。

三河はこの試合に負ければ川崎に中地区2位の座を奪われ、チャンピオンシップ圏内から脱落するところだった。しかし、この正念場でリッチマンヘッドコーチが「40分間を通してオフェンスもディフェンスも素晴らしかったです。負けたら順位が下がる逆境を打破した選手を本当に誇りに思います」と称える見事なパフォーマンスを見せた。

久保田義章

「ここまで勝率が良かったシーズンがないので、シンプルに楽しいです」

28得点のガードナーと共に大きなインパクトを与えたのが司令塔の久保田だ。前半と後半の最初のオフェンスで3ポイントシュートを決めて勢いをもたらすなど、22分13秒の出場で18得点5アシストを記録した。

「試合を通してターンオーバーを6に抑えることができました。僕らはローターンオーバー、ハイアシストをチームで掲げていて、それをしっかり全員で意識して体現できたことがこの点差での勝利になったと思います」

こう勝因を語った久保田は、本日0ターンオーバーと司令塔として堅実なゲームメークも光った自身のプレーをこのように振り返る。「まず、ファーストショットが入って今日は積極的に狙いに行ったことで得点に繋げられました。ターンオーバーを減らしつつ積極的にリングにアタックする姿勢でチームに貢献できたのはよかったです」

また、今シーズンの三河は川崎に対し、天皇杯を含めて4戦全敗を喫していた。それだけに「ここまですべて負けている相手で、絶対に勝ちたい気持ちはありました。そして、全員の勝ちたい気持ちが全面に出た試合だと思います。相手より気持ちで上回れました」と言うように、負けっぱなしで終われないという強い思いも勝利に繋がった。

地区2位の座を守った三河だが、CS出場へ安心できる状況ではなく、1つの負けがチームの運命に大きな影響を与える正念場はまだまだ続く。プロキャリア4年目の久保田にとって、CSを争う位置でプレーするのは今回が初めてとなる。司令塔として大きなプレッシャーがかかってもおかしくないが、久保田に気負いはない。

「ここまで勝率が良かったシーズンがないので、シンプルに楽しいです。自分にプラスになる経験を積めていて、すごく良い環境にいるという実感はあります。(プレッシャーより)この舞台でやれている充実感の方が大きいです」

ちなみにリッチマンヘッドコーチは、久保田について「オフの日も返上して体育館に来てウェイトトレーニングをして、自分の身体を変えようと必死に取り組んでいます。そういったところは少しずつ結果に表れていると思います」と、日頃のハードワークを賞賛している。

この指揮官の言葉について、久保田は「チームに貢献できるため、自分が変わろうとしている中でそう言ってもらえるのはうれしいです。初のプレーオフ、優勝を達成したいのでやるだけです」と答えた。これまでにない痺れる状況を歓迎する久保田の、冷静沈着かつ強気なプレーは三河がCS出場をつかむために不可欠だ。