「目が覚めた時、まだ動けることを願っている」
レギュラーシーズンの出来がどうであれ、プレーオフのヒートは常に厄介な相手だ。プレーイン・トーナメントの初戦でセブンティシクサーズに1点差で敗れ、現地4月19日に第8シードをブルズと争うことになったが、東カンファレンスを圧倒的な強さで突っ切ったセルティックスは、プレーオフ初戦でヒートと当たる可能性が残ったことに良い気分はしなかっただろう。
直近の4シーズン、レギュラーシーズンの順位は5位、6位、1位、8位と安定しないにもかかわらず、このうちカンファレンス・ファイナルに3度進出した。いずれも相手はセルティックスで、2度はヒートがNBAファイナルへと進んでいる。
しかし、ヒートのポストシーズンにおける強さは揺らいでいる。その強さの根幹を成す『プレーオフ・ジミー』ことジミー・バトラーがケガをしたからだ。シクサーズ戦の第1クォーター終了間際、すでに2つのスティールからファストブレイクでの得点を決める勝負強さを発揮していたバトラーは、ケリー・ウーブレイJr.をフェイクでかわしてレイアップを狙ったが、先に跳ばせたウーブレイJr.と空中で接触し、バランスを崩した。
着地で膝をひねったバトラーはコートに倒れて痛みに悶絶し、しばらく立ち上がれなかった。痛みをこらえてフリースローを2本投げて、1本を外したところで第1クォーター終了。そのまま第2クォーターの頭から出てきたのは驚きだったが、彼はいきなりエンビード相手に仕掛けてファウルを引き出し、ヒートを牽引する姿勢を強く打ち出す。膝を気にする素振りはあったが結局40分間プレーして、19得点4リバウンド5アシスト5スティールを記録した。
検査の結果は右膝の内側側副靱帯損傷で、『ESPN』は数週間の戦線離脱になる見込みだと報じている。ケガをした後に30分以上出場を続けたのは、まさに精神が肉体を凌駕するパフォーマンスだったが、だからこそ勝ってプレーオフ行きを決めなければいけなかった。試合後のバトラーはこうコメントしている。「アドレナリンが出ていたからプレーを続けられたんだと思う。でも攻撃でも守備でも多くの仕事はできなかった。いろいろとタイミングが最悪だった。明日の朝に目が覚めた時、まだ動けることを願っている。今はそうだとは言えない」
中1日を空けて、舞台をマイアミに移してブルズ戦が待っている。ただ、バトラーがプレーするのは難しいと言わざるを得ない。昨シーズンも第8シード決定戦はヒートvsブルズで、バトラーが31得点の大活躍でヒートをプレーオフに連れていった。ブルズのデマー・デローザンは言う。「帰りの飛行機で全員が最悪の気分だったのを覚えている。同じ思いはしたくない」
タイラー・ヒーローは「ウチもブルズも1年前と同じチームじゃない。全く違う戦いになるから比べられない」と語る。シクサーズ戦でのヒーローは25得点9アシストを記録したが、同点の残り1分でバックコートバイオレーションを犯して貴重なポゼッションを潰し、残り26秒で決めれば同点の3ポイントシュートをニコ・バトゥームにブロックされ、クラッチタイムに結果を残せなかった。
「もちろん、決めたかったよ。でも全部は決められない」とヒーローは言う。「できる限りのことはやったつもりだ。ディフェンスで競り合い、チームメートのためにプレーすることを心掛けた。僕らはただ戦い続けるだけだ」
ヒートではすでにテリー・ロジアーが首を痛めて戦線離脱しており、ダンカン・ロビンソンは背中の痛みでレギュラーシーズン終盤は出たり休んだりを繰り返している。ブルズ戦でバトラーがプレーするのは難しいと言わざるを得ないが、欠場となればヒートは苦しい状況に追い込まれる。