「過去4試合と比べてディフェンスの強度が一番違ったと思っています」
4月10日、川崎ブレイブサンダースはホームでサンロッカーズ渋谷と対戦。立ち上がりから強度の高いプレーで流れを引き寄せると、最後まで高い集中力をキープし80-52で快勝し、連敗を4でストップした。
第1クォーターの出だし、SR渋谷がファウルを重ねてリズムに乗れない中、川崎は藤井祐眞やジョーダン・ヒースが効果的に3ポイントシュートを成功させる。また、守備でも粘り強くプレッシャーをかけることで、このクォーターでSR渋谷のフィールドゴールを14本中4本の成功に抑え込み、23-9と先制パンチをくらわす。
第2クォーターに入っても川崎は、24秒バイオレーションを奪うなどディフェンスでしっかりと踏ん張ることで、2桁リードを保ってハーフタイムを迎える。後半に入ると、トーマス・ウィンブッシュが鋭いドライブに3ポイントシュート成功と大暴れ。このクォーターだけで12得点を挙げたウィンブッシュの活躍によって、リードを20点台にまで広げる。第3クォーター終了時点で64-40と大差をつけ、そのまま逃げ切った。
この試合の前まで、川崎は千葉ジェッツ、広島ドラゴンフライズを相手に4連敗を喫していた。しかも4試合すべてで90失点以上かつ、2桁以上の点差での敗戦と、守備崩壊による大敗が続いていた。それが一転して、この試合では堅守による快勝と負の連鎖をようやく断ち切った。
川崎の佐藤賢次ヘッドコーチは、「今日はもう選手のおかげです。出だしから高い強度でプレーし、インテンシティをずっと保ち続けてくれたことが一番の勝因だと思います」と振り返る。
指揮官も称えた強度の高いプレーを誰よりも実践したのが藤井で、持ち前の激しいディフェンスでチームにエナジーを与えると、オフェンスでも第1クォーターで3ポイントシュート2本成功を含む8得点をマーク。攻守にわたってチームを牽引して流れをもたらし、試合全体で15得点4アシスト2スティールを記録している。
「大差で負けている苦しい試合が続いて、本当に勝たなければいけない状況でした。今日は出だしからチームでやりたいことができ、チャンピオンシップ(CS)を争っている相手にこういう結果で勝てたことは素晴らしいと思います」
このように試合を総括した藤井は、「今日は過去4試合と比べてディフェンスの強度が一番違ったと思っています」と語り、守備の変化をこのように見ている。「ボールマンにしっかりプレッシャーをかけて、相手がピックを仕掛けた時にもしっかりコミュニケーションを取って対応できていました。広島戦、千葉戦とオーバーヘルプ気味になってオープンで3ポイントシュートをたくさん打たれていたのを今日の試合は減らせたことがすごく大きかったと思います」
「全部を出し切るつもりで、自分らしくアグレッシブにプレーする」
川崎はBリーグ誕生時から強豪であり続けている。それだけに、主力メンバーが揃った中で4試合続けての完敗は、藤井にとってあまり経験したことのない状況だった。「試合が終わって月曜、火曜としっかり切り替えて次の試合のことを考えています」と、引きずることはなかったが、一方で試合中には苦しい思いを抱えることもあったという。「例えば広島戦だったら点数が開いてしまって、最後に交代してベンチで見ていました。あきらめてはいないですが、自分が出てどうにかしたい思いがありながら、大差で(負けが決まっていて)次に切り替えないといけないのはもどかしかったです」
また、もどかしいと感じる一因には、31日の千葉J戦、6日の広島戦で不動の先発を外れるなど、コンディションが万全ではないことも影響していた。だが、CS出場へ崖っぷちの中、一切の言い訳をせずに、すべてのエナジーを出して戦い抜くとあらためて強調する。「足の状況もあって思うようなプレーができなくて本当に苦しかったですし、チームにも迷惑をかけてしまいました。ただ、自分の良さはアグレッシブにやっていくことですし、コートに立ってしまえば痛いとか関係ないです。今日は全部を出し切るつもりで、自分らしくアグレッシブにプレーすることを心がけてプレーしました。良い結果が出て良かったです」
この勝利で川崎はなんとかCS出場への希望を繋いだ。ワイルドカード2位の島根スサノオマジック、中地区2位のシーホース三河とは3ゲーム差で、さらに三河との直接対決は2試合残っている。ここで連勝できれば、同率で並んだ時には直接対決の成績で上に立てることもあり、まだ可能性は残っている。
「負けられない状況で、今はCSを戦っているつもりでやっています」。レギュラーシーズン残り9試合、藤井の意気込みをチームで継続できれば、奇跡のCS出場へのチャンスは巡ってくるはずだ。