「西地区優勝に向けて一歩、前に進むことができました」
4月6日、琉球ゴールデンキングスはホームで千葉ジェッツと対戦。相手の得意とするトランジションからのアーリーオフェンスをよく食い止め、強みであるゴール下でしっかり優位に立つことで85-76で勝利した。
千葉Jは欠場中のジョン・ムーニー、クリストファー・スミスに加え、いぶし銀のプレーで見事な繋ぎ役を果たしていた荒尾岳もコンディション不良で欠場。インサイドがより手薄な中での一戦となった。立ち上がり、琉球は千葉Jのエース、富樫勇樹を止めることができず。プルアップからの外角シュートに加え、ゴール下のドライブからのパスでゼイビア・クックスへの豪快なアリウープをお膳立てされてしまう。一方、琉球はこのクォーターで4人が4得点以上と、パスを散らすバランスの取れたオフェンスで対抗し互角の立ち上がりとなる。
第2クォーターに入ると、琉球は守備でしっかりアジャストすることで、プレッシャーを強め千葉Jにタフショットを強いる。そして、要所でオフェンスリバウンドからのセカンドチャンスなど、ゴール下で得点することで突き放し、9点リードでハーフタイムを迎えた。
後半に入っても琉球ペースで試合は進んでいく。ベンチメンバーが積極的なプレーでチームに勢いをもたらす琉球は、第4クォーター序盤に牧隼利、荒川颯による連続3ポイントシュートで67-52と突き放す。しかし、ここから千葉Jも意地を見せ富樫、クックスを中心とした攻めで得点を重ねていくと、琉球は逆にボールムーブが停滞しリズムを崩す。その結果、残り3分で琉球のリードは5点に縮まり、勝負の行方はわからなくなる。
だが、ここで琉球はクーリーのオフェンスリバウンドから得たセカンドチャンスで、ヴィック・ローがドライブをねじ込む値千金のバスケット・カウントを獲得。フリースローもしっかり決めることで悪い流れを断ち切ると、そのまま逃げ切った。
勝利をもたらすシュートを沈めたローは、フィールドゴール15本中6本成功と確率は良くなかったが、要所でしっかりと決め17得点を記録。また、10リバウンド6アシスト2ブロック2スティールとオールラウンダーぶりをいかんなく発揮した。
琉球の桶谷大ヘッドコーチも「(オフェンスでは)ローのところでボールがしっかりとおさまり、いろいろとクリエイトできたのが良かったです。ディフェンスは機動力を生かし、4番ポジションで重要な役割を担ってくれたと思います」と攻守での高い貢献を讃えた。
そして、ローは、「勝利することができてとても気分は良いです。西地区優勝に向け、これから名古屋、島根との3試合が控えている中で一歩、前に進むことができました」と語ると、昨シーズン在籍した古巣である千葉Jへの特別な想いをこう明かす。
「相手が千葉で感情的になったところもありました。試合前にスミス選手と話したり、元チームメートたちと会えるのは素晴らしいことです。彼らとの友情は続いています。僕たちとの試合以外では、千葉が良いプレーをするのを見たいですね」
「コート上で感じたことをコーチ陣として共有していて、それで勝利に向かって前進できればいいと思う」
リーグ屈指のオールラウンダーとして鳴り物入りでオフに加入したローだが、シーズン中盤までは故障など様々な影響もあり、チームになかなかフィットせず本来の力を思うように発揮できない時期もあった。だが、ここに来て、徐々に噛み合いつつある。ロー本人も「僕が心配しているのは健康面だけです」と手応えを得ている模様だ。そして、「40分プレーするのが好きですが、膝の状態もあります。それに、うちのチームには多くのタレントがいます」と、琉球の選手層への絶大な自信を語った。
右肩上がりというよりもアップダウンがあり、今も試行錯誤の途中だが、それでも確実にローが周囲との連携を向上させているのは間違いない。それは指揮官との良好な関係も大きく影響しているだろう。桶谷ヘッドコーチは、ここまで何度かローと激しい議論を交わしたと明かしているが、これはしっかりとした信頼関係があるからこそ。ローは指揮官に対し、「コーチダイは僕が千葉を去り、キングスに来た大きな理由の1つです。彼は本当に良い人ですし、素晴らしいバスケットボールマインドの持ち主です。彼とはとてもオープンに話し合うことができています」と信頼を寄せる。
また、ローといえば闘志を全面に押し出してプレーする選手であり、試合中もコーチ陣と感情を露わにしながらコミュニケーションを取る場面も見られる。それもしっかりとした絆があるからこそだ。ローはこう語る。
「コート上で感じたことをコーチ陣として共有していて、それで勝利に向かって前進できればいいと思います。僕は本当に試合に勝ちたい。勝つためには、情熱的にプレーする。そしてみんなが正しい位置にいてプレーすることが必要だと、コーチダイは分かっているし、僕の意見もリスペストしてくれます」
レギュラーシーズン終盤に来て、ローは確実に周囲との連携における最適解を見つけつつある。昨シーズンの優勝を含め、琉球はコロナ禍による中断を挟んで5年連続でチャンピオンシップセミファイナル進出とポストシーズンで安定した成績を残している。それは終盤にかけてチーム力を高めていけるからこそで、今シーズンの最後の底上げのキーマンは、ローとなりそうだ。