ルグエンツ・ドート

直近の3ポイントシュート成功率はリーグトップの49.3%

ルグエンツ・ドートはキャリア5年目、まだ24歳ながらサンダーでは『ベテラン』の雰囲気をまとっている。ゴードン・ヘイワードにマイク・マスカーラ、ビスマック・ビヨンボの30代トリオは(マスカーラは過去に在籍経験がある馴染みの顔ではあるが)2月のトレードデッドラインにチームに加わったベテランであり、主力は若手ばかり。ルーキーイヤーを終えたタイミングでポール・ジョージとのトレードで2019年オフに加入したシェイ・ギルジャス・アレクサンダーと、その年にルーキーとして入団したドートの2人がチームで最も古株の選手だ。

オールスターでありMVP候補のシェイとは対照的にドートは『主役』ではない。ドラフトで指名を受けられず、2ウェイ契約で最初はGリーグが主戦場。2019-20シーズンの途中からサンダーのローテーションに食い込んだが、フィジカルを生かしたタフなディフェンスを前面に押し出すプレースタイルで、オフェンス面では武器のない選手だった。1年目の3ポイントシュート成功率は29.7%。当時すでにNBAで流行していた『3&D』ではなく、ただ『D』で奮闘するのが彼のスタイルだった。

このシーズンはサンダーにとってラッセル・ウェストブルックとポール・ジョージを放出した再建1年目。クリス・ポールに導かれてプレーオフ進出こそ果たしたが、その後は雌伏の時に入る。そんなサンダーでドートは2年目の2020-21シーズンにオフェンスでも積極性を見せ始める。フィジカルの強さを生かしてペイントエリアで勝負し、コンタクトを受けながらも強引にねじ込むスタイルを確立し、得点は1年目の6.8から14.0へと倍増した。その後もドートは、あくまでディフェンスでチームを支える役回りながら、チャンスがあれば思い切って攻める選手へと成長していく。

劇的な変化があったのは今シーズンで、これまでのキャリアを通じて33.1%だった3ポイントシュート成功率が41.1%と、いきなりエリートシューターの仲間入りを果たした。得点自体はキャリアハイだった一昨シーズンの17.2得点、昨シーズンの13.7得点に比べて今シーズンは10.8と低いものの、それはシェイにジェイレン・ウィリアムズ、チェット・ホルムグレンとタレントが育ったチームで彼が強引に得点を狙う必要がなくなったためで、フィジカルを生かしたタフショットを打つ機会が消え、数は少なくても決めるべきチャンスに高確率で決める選手となっている。

レギュラーシーズン残り14試合の今、チームは西カンファレンスの首位に立っており、ドートは『3&D』として貢献している。今まさに彼の3ポイントシュートは絶好調で、オールスターブレイク以降はリーグトップの成功率49.3%を記録している。

シュート成功率向上の秘訣を問われたドートは「フィルムセッションをしっかりやっているおかげ」だと、サポートしてくれるスタッフの熱意に感謝した。「時間はかかったけど、良いショットを打ち続けている今の自分の出来には満足している」と自分の成長について語るも、「それはチーム全体の取り組みなんだ。僕たちはいつもチームの成長のために何ができるかを話し合っている。みんな一緒に取り組んでいるからこそ、お互いのプレーを理解できているんだ」と、個人ではなくチームの成果を強調した。

「別に難しいことじゃない。僕もそうだし他のチームメートも、チームとして効率の良いプレーをするために何ができるか、その理解を深めるために何ができるか、そのすべてをやるようにしている」とドートは言うが、多くのチームでその取り組みは成果に繋がっていない。他にも様々な要因があるだろうが、チームリーダーとして背中で引っ張る彼の存在感もサンダーの成長に大きく寄与しているはずだ。

ドートにとってプレーオフはルーキーシーズン以来となる。プレーオフに向けた準備と第1シードを取りに行くこと、しばしば相反する2つの要素のバランスをどう取るか問われたドートは「一試合ずつ戦っていくだけ」と答えた。「対戦相手がどこであろうが、目の前の試合に集中して勝ちに行く。ポストシーズンが近付いているのは分かっているけど、まずはレギュラーシーズンをやり遂げる。この1カ月はそうやって過ごすつもりだ」