小川麻斗

課題だった若手のステップアップで栄光をつかみ取る

千葉ジェッツは『EASL Final Four 2024』の2試合に勝利し、初代王者に輝いた。

MVPを受賞した富樫勇樹のハイパフォーマンスが優勝の原動力となったことは間違いないだろう。そのうえでジョン・ムーニーの安定感やゼイビア・クックスの爆発、ロールプレーヤーの貢献などがあり、チーム一丸で栄光をつかみ取った。そして、この優勝は千葉Jが抱えていた課題が解決されたことも意味する。

今シーズンの千葉Jは外国籍選手のアジャストに時間がかかり、主力の負傷離脱もあって序盤戦は勝ち星が伸び悩んだ。そのため、若手選手の早期のステップアップが求められていた。その中で金近廉と小川麻斗の2人が、決勝戦で大仕事を成し遂げた。金近はファーストシュートでタフなフェイダウェイを決めると、アグレッシブにアタックし続けディフェンスを収縮させた。第2クォーターにはアイラ・ブラウンへの絶妙なアシストを披露。金近のこのプレーでリードを7点に広げ、ソウルSKナイツに最初のタイムアウトを取らせた。金近は気持ちの昂ぶりを抑えつつ冷静にプレーできたと振り返る。

「本当に気合いが入ってました。気持ちを出し過ぎずというか、しっかりコントロールした中でプレーできたと思います。ディフェンスも相手のキーのところをある程度止めることができたので、それも良かったです」

小川は持ち前のディフェンス力でチームのディフェンス強度を高めるとともに、ハンドラーを担ってフェイスガードを受ける富樫の負担を軽減。第3クォーターには、コートに立ってすぐにトランジションスリーを沈めると、直後には激しいプレッシャーでボールを奪い、ワンマン速攻を成功させた。小川に連続得点を許したSKナイツは後半最初のタイムアウトを余儀なくされた。小川は言う。「自分の持ち味はディフェンスなので、ディフェンスから少しでもチームにエナジーや良い雰囲気を持ってこれるようにしました。それが後半の3ポイントやスティールからのレイアップに繋がったと思います」

2人はともに準決勝のニュータイペイキングス戦でインパクトを残せず、不完全燃焼に終わっていた。金近が「全部置いてくる気持ちで最後まで戦いました」と語ったように、小川もリベンジを期していたという。「準決勝は本当に自分と金近があまり良くなくて、ジョン(パトリックヘッドコーチ)さんにずっと『Young guys』と言われていました。思い切ってやろうと2人でコミュニケーションを取って、切り替えてとりあえず思い切ってやることだけを考えていました。目標の1つのタイトルを獲れたので良かったです」

富樫も2人の思い切ったプレーを手放しで喜んだ。「(小川の)3ポイントはパスした瞬間から、打つ気だなって分かりました。その後のレイアップといい、良かったです。金近も思い切りのいいプレーをしていて、入る入らないじゃなく、リングに向かう気持ちが見えました。負けたら終わりというレギュラーシーズンとは違う雰囲気で、彼らがまた1つ試合できたことが、また次の天皇杯決勝にも生きると思うので、楽しみです」

富樫が言うように、チャンピオンシップを見据えるチームにとって、レギュラーシーズンでは得られない経験を積めたことは大きなプラスとなる。小川も「昨シーズンのチャンピオンシップで1本も3ポイントを決められなかったことが個人的に悔しかったです。大会は違いますけど、この大舞台の大事なところで決め切れて、ステップアップできたのかなと思います。すごく良い経験になりました」と言い、確かな手ごたえを感じた。

また金近も「チームとしても、僕自身としても自信がついた」と言い、今後の戦いに向け自信を深めたようだ。「これから天皇杯決勝がありますし、本当の意味で乗り越えないといけない山場がたくさんあります。その前にこういう経験ができて、優勝ができたのは本当にチームにとってプラスだと思います。こういうところで勝負強さはついてくると思うので、そういったゲームを勝ち切れて、チームとしてもまた一段階上がったのかなと思います」

『EASL Final Four 2024』という大舞台で、若手のステップアップに成功した千葉J。レギュラーシーズンが終盤戦を迎えたこのタイミングで課題を克服できたことは、CSへ向けた大事な戦いが続く上で大きなアドバンテージとなるはずだ。