文=鈴木健一郎 写真=野口岳彦

感情的にはなってしまうけど良いハートを持った選手でした

今のアルバルク東京を語る上で、トロイ・ギレンウォーターの話題は避けて通れない。

2月4日、ギレンウォーターとの契約を解除して初めて迎えた名古屋ダイヤモンドドルフィンズとの一戦。この試合を終えた後の会見で「ギレンウォーターがいなくなった難しさを感じるか」と問われた伊藤拓摩ヘッドコーチは、「もちろんあります」と率直な気持ちを語り始めた。

「行動だけ見ると批判されてしまうでしょうが、感情的にはなってしまうけど良いハートを持った選手でした。今まで一緒に戦った選手がいないことは、戦術や戦略以上に気持ちの面で影響があったと思います」

「今シーズンの開幕戦はすごく特別で、あそこを乗り切るチーム作りをしてきました。そこを戦った仲間が抜けるのは想像ができなかった。こういう状況になった時に選手一人ひとりが逆境にどう立ち向かうか。それは選手と話し合いましたし、今日の試合でも後半はできたと思います」

思い出されるのは昨年10月末、多数の退場者を出したことで話題となった千葉ジェッツとの乱闘劇だ。事件の発端とは無関係だったにもかかわらず、仲間を守るために結果的に乱闘劇の主役の一人となってしまったギレンウォーターがリーグから処分を受けた際にも、伊藤ヘッドコーチは「チームのためにやったことで、悪いことだとは全く思っていない」と、処分は受け入れながらも、あくまでギレンウォーターを擁護する姿勢を崩さなかった。

今回も気持ちは同じなのだろう。ただ、もうギレンウォーターはいない。

彼と同じく昨夏に新外国籍選手としてA東京に加入したディアンテ・ギャレットは「中心選手として大きな役割を担っていた。オフェンスも彼を中心で攻めていた」と、ギレンウォーターの抜けた穴の大きさを認めながらも、「彼はもうこのチームにいないので、個々でステップアップしてレベルを上げていくことが大切。それを初戦で出来たことができたことは大きい」と、ギレンウォーターを欠いたチームが一丸となって戦い、勝利できたことの意義を強調した。

ギャレットは言う。「逆風の中で立ち向かう気持ちをみんなで持って、前進して、結束力を高めて彼のいない分も頑張っていこうとチームで話した。自分も今日は調子が良かったけど、自分だけでなく他の選手もどんどん良い活躍をしていくと思う」

まだシーズンは折り返し地点をすぎたばかり。それほど遠くない時期に、A東京はギレンウォーターに代わる外国籍センターを迎え入れることになるだろう。だが、その新戦力が誰になるにせよ、ギレンウォーターと同じ選手がやって来ることはない。好むと好まざるとにかかわらずチームは変化していくもの。変化の機会をチャンスととらえて進化できるかどうか、A東京の『正念場』はまだしばらく続きそうだ。