安藤誓哉

「序盤で火事が起きた時にすぐ火を消せるのか。今日は良いお手本だった」

島根スサノオマジックは3月2日、アウェーに乗り込んでアルバルク東京と対戦。安藤誓哉、ペリン・ビュフォードの2枚看板を筆頭にチーム全体で強気のアタックを貫くことでA東京の堅守を攻略し、87-79で勝利した。

試合の出だし、島根は本日トリプル・ダブル(27得点14リバウンド10アシスト)を達成したA東京のライアン・ロシターを中心とした強度の高いプレーに攻守とも対抗できず、4-13と先手を取られてしまう。しかし、ここでタイムアウトを取って立て直すと、ビュフォードの豪快なダンク、津山尚大の3ポイントシュートなどトランジションから得点を重ねることで流れを変え20-24と追い上げる。

そして第2クォーターに入ると、島根は安藤、ビュフォードの積極的なドライブでA東京の守備を切り崩すと、このクォーターで3ポイントシュートが5本中5本成功と火を吹く。この結果、48-42と逆転してハーフタイムを迎える。

後半に入っても島根の勢いは止まらない。引き続き安藤とビュフォードを軸に要所でニック・ケイや津山が3ポイントシュートを決める隙のないオフェンスでA東京を圧倒。第3クォーター残り5分には安藤の長距離砲でリードを15点にまで一気に広げた。その後も島根のペースで進む中、第4クォーター終盤にA東京が粘りを見せ、残り1分半で6点差にまで追い上げるが、それが精一杯で島根が逃げ切った。

32分56秒のプレータイムでゲームハイの29得点に5アシストを記録した安藤は「僕らが最初のタイムアウトで気持ちを入れ直し、早めに対処できたことが勝てた要因だと思います」と試合を振り返る。

「序盤で火事が起きた時にすぐ火を消せるのか。最初にタフなビハインドを背負った時に対応できるのか、今日は良いお手本だったと思います。やっぱりメンタルが本当に重要です。みんながバラけるのではなくまとまり、一人ひとりがエナジーを出していくことです」

ドライブ、外角シュートともに精度の高い安藤だが、今日はリーグ随一のサイズを誇るA東京の屈強なインサイドが相手の中、レイアップやキックアウトのパスなど効果的なドライブが光った。本人も大きな手応えがあったと明かす。「あんなに中が空くとは思っていなくて、もっと外に引っ張り出されると予想していました。ドライブに行けると、自分だけでなくチームのリズムを変わってくるのでそれは良かったです」

安藤誓哉

「レギュラーシーズン60試合が終わった時、どれだけ成長できているのか」

バイウィーク中、どんな部分にフォーカスしていたかを聞くと、安藤は「僕らのスタイルはもっとペースを上げて、全員が攻め気で行く。そこに対する認識をあらためました」と自分たちの武器を見つめ直す原点回帰が一番と語った。

その意味で今日の島根は内容においても理想的だった。しかし、安藤に満足感はなく、大事なのは明日の第2戦に、どんなプレーを見せることができるかと強調する。「今日、1勝できたことは勝率の部分でホッとしました。ただ、明日アルバルクはさらにインテンシティを上げてきます。その相手に対して僕らがどれだけできるのか、それが本当の勝負だと思います」

こう安藤が考えているのは、2戦先勝方式のチャンピオンシップ(CS)を見据えているからだ。もちろん地区優勝など、より上の順位でCSに臨むことは理想だが、レギュラーシーズンでしっかりとチーム力を高め、上昇気流に乗ってポストシーズンを迎えることが何よりも重要だと言う。

「レギュラーシーズン60試合が終わった時、どれだけ成長できているのか。リーグ戦からプレーオフの流れなので、それが重要です。現にアルバルクでワイルドカードから優勝した経験があります。当時を思い出しても、バイウィーク中にしっかり準備をして、最後に勝てる自信、モチベーション、勢いがあったと感じます。同じようには行かないとは思いますが、そこは意識しています」

この成長の部分で言うと、この試合ではハッサン・マーティンの攻守にわたるインパクトは大きかった。チーム加入1年目でシーズン前半戦は噛み合うのに苦労していた印象もあるマーティンだが、本日は9得点2リバウンドに加え3ブロックと、ゴール下でA東京に重圧を与えた。

安藤はマーティンの実力に疑いの余地はなく、いかに周囲との連携を磨けるかだけと信頼を寄せる。「オフェンスもディフェンスもすごい良くなっているというのではなく、フィットしてきた印象です。(欧州最高峰の)ユーローリーグでプレーしていた選手ですし、しっかりアジャストしてもらったら今日みたいなプレーができます」

これで島根は23勝17敗。CS圏内ではあるが、「ちょっと今までが悪すぎました。やれることはもっとありますし、もっと自信を持ってやらないといけないです」と安藤が言うように、過去2シーズンに比べると勝率は最も低い。それでも、安藤は島根がもっと高みに行けるチームだと信じており、今日はそれを証明するパフォーマンスだった。