文=松原貴実 写真=三上太

2014年より男子日本代表チームの指揮を執った長谷川健志ヘッドコーチの退任に伴い、昨年12月にテクニカルアドバイザーのルカ・パヴィチェヴィッチを暫定指揮官とした新生AKATSUKI FIVEが始動した。選出された68名の重点強化選手は1月の合宿で30名に絞られ、さらにそこからふるいにかけられた15名が2月10日、11日に開催される国際強化試合(対イラン)に臨むことになる。

2020年の東京オリンピックに向けて日本男子代表はどのようなチームを目指していくのか。長谷川ジャパンに引き続き、アシスタントコーチとして日本代表をサポートする佐々宜央に話を聞いた。

ヘッドコーチが代われば戦術、戦略、戦い方も変わる

――佐々さんは前任の長谷川ヘッドコーチの下で2年間アシスタントコーチを務め、今回またバヴィチェヴィッチ・テクニカルアドバイザーをサポートする任に就かれたわけですが、佐々さんから見た代表チームの『変化』について聞かせてください。

当然のことながら前回の長谷川さんも現在のルカさんも「日本のバスケットを強くしていこう」という熱い思いを持った指揮官であることに変わりはありません。ただ、これも当然ですが、ヘッドコーチが代われば戦術、戦略、戦い方も変わります。

長谷川さんは長く韓国のバスケットを見てきた方で、パスで動かしてシュートチャンスを作る韓国のモーションオフェンスを取り入れたチーム作りをされてきました。一方ルカさんはヨーロッパでやってきた方なので、スペースを生かしてピック&ロールを多用する、ヨーロッパのバスケットが主体となります。

タイプとして言うなら長谷川さんはオフェンスティブなコーチ。日本のディフェンスをもう一度見直し、より激しさを求めるルカさんはディフェンスティブなコーチだと感じています。

――そういった『変化』に対してアシスタントコーチとして戸惑いを感じることはありませんか?

いや、それはありませんね。僕は自分の意見をはっきり言わせてもらっていますし、そういった意味で「ヘッドコーチが変わったらからやり辛くなった」というストレスは全くありません。

もし戸惑いを感じるとしたら、それは僕ではなくこれまで長谷川ヘッドコーチの下でやってきた選手たちだと思います。ヘッドコーチが変わったことでいきなり戦い方が変わるわけですから。もし、そういう『ズレ』のようなものが生じた場合、それを埋めるのは自分の仕事だと思っています。

――『ズレを埋める』とは具体的にはどういったことでしょう?

僕はルカさんとは非常に長い時間一緒にいて、今までの日本代表はどうだったのか、こういうところは良かった、こういうところは悪かった、じゃあどうしたら良くなっていくのか、どう変えていかなきゃならないのか、といった話は本当にいっぱいしてきました。そういう過程を踏んできたおかげでルカさんが目指すバスケットは理解できていると思います。

だから、ルカさんが言ったことが今一つ選手に伝わっていないなと感じることがあったとしても、「前はこうだったけど、ここはこう変わったんだよ」と僕が伝えることができる。それが自分の仕事でもあり、力にならなきゃいけないところだと思っています。

と言っても、ルカさんの進め方がうまいこともあって、選手たちの中にそれほど戸惑いは感じられません。今のところ大きなズレもありませんし、その部分で自分の出番が少ないのはいいことですね(笑)。

長谷川さんとともに戦ってきた自分の責任

――少し踏み入った質問になりますが、長谷川ヘッドコーチの退任は佐々さん自身は予測していましたか?

そうですね。やはりオリンピック最終予選で結果を出せなかったこと、ジョージ・ワシントン大との親善試合で恥ずかしい負け方をしてしまったことなどを考えると、厳しい世界ですから長谷川さんの退任もあり得るというのは考えていました。

それはアシスタントコーチの責任でもありますから、自分の退任も意味します。今回僕が(アシスタントコーチを)継続させてもらったのは、現在Bリーグのどのチームにも所属していないこととか、まあ細かく言えばいろんなタイミングもあるんですが、自分の気持ちの上で大きかったのは長谷川さんが「おまえは続けた方がいい」と言ってくださったことです。

さっき言ったようにチームのヘッドが変われば戦術、戦略は変わりますが、かと言ってすべてがリセットされるわけではありません。例えば長谷川さんが築いてくれた「代表とはこうあるべきだ」という姿勢は選手の中に残るものであり、継続されていくべきものです。僕の役割の一つはそれを繋いでいくこと。それが長谷川さんとともに戦ってきた自分の責任でもあると思っています。