松崎裕樹

取材=古後登志夫 構成=鈴木健一郎 写真=古後登志夫、野口岳彦

松崎裕樹はこの春に福岡第一高校を卒業し、東海大へと進む。福岡第一では1年生レギュラーとしてインターハイとウインターカップの2冠を勝ち取り、キャプテンを務めた自分の代でもウインターカップ優勝と、多くのタイトルを勝ち取る3年間を過ごした。彼らを送り出す意味もあった『全国制覇祝勝会』で、卒業を目前に控えた松崎に話を聞いた。

アメリカへの旅で「刺激を得られました」

──間もなく卒業ですが、福岡第一での3年間を振り返ってください。

1年生では先輩たちについていって全国優勝させてもらって、2年生は自分がバスケットをしてきた中でも挫折があり、ショックが大きい年となりました。この1年はそれを取り返す気持ちで、キャプテンに指名していただいたことが頑張るきっかけになりました。絶対に日本一になって終わろうとやってきて、高校最後の集大成の大会で、自分たちの代で日本一になって終わることができたので良かったです。強いて言えば3年生でのインターハイには出たかったですけど、高校バスケに悔いはありません。

──ウインターカップが終わってからは、少しバスケはお休みでしたか?

ウインターカップが地元に帰って、友達とご飯を食べたりしてたんですけど、やっぱり毎日バスケットをする生活をずっと続けていたので、1週間も休むと身体がウズウズしちゃって。やらないと自分が落ちていく気がして、福岡に戻ってからは高校の練習に毎日参加しています。「結局は変わらないな」って思います(笑)。

でも地元は良いです。友達はまだ受験生が多いので食事に行くぐらいですが、受験が終わった友達とはバスケをしたりとか。少しの時間でも友達に会えると楽しいです。地元に帰っていた時期はいつもより食べる量が多くて、質を落とさないように筋トレはしていました。家のご飯が一番だと感じましたね。一番は家のカレーライスで、朝から食べてました(笑)。

──アメリカに行って、NBAを見たり現地の練習に参加したとも聞きました。

はい。井手口(孝)先生に勧められて行きました。現地の高校で練習に入らせてもらったり、最新のシューティングマシーンを使わせてもらったり、NBAのスキルコーチにマンツーマンでワークアウトさせてもらいました。ゲーム形式ではなかったんですけど、個人のファンダメンタルをもう一回見つめ直すことができました。

アメリカで活躍している選手たちは身体能力が高くて、ダンクとかに目が向きがちですけど、やっぱり一番大切にしているのはドリブルやパスのファンダメンタルで、自分たちは身体能力だけでなく、そのファンダメンタルの部分でも劣っていると感じました。高校では日本一になりましたが、世界に目を向けたら普通のプレーヤーなんだな、と。身体能力も必要ですが、細かいファンダメンタルも見つめ直す必要があって、また基礎からやっていきたいという刺激を得られました。

NBAも見てきて、バスケのレベルが高いのは当然ですけど、演出のすごさとか現地のファンの人たちにどれだけ密着しているか、地域全体でバスケットを盛り上げようとする取り組みが日本よりも進んでいると感じました。現地に行かないと分からない部分を見られて良かったです。

松崎裕樹

「バスケが仕事になっても、僕は楽しんでやれる」

──進学先はインカレ王者の東海大です。どういう思いから決めたのでしょうか?

大学がシーズン中だったので練習参加はできませんでしたが、何校か話をいただいて結構悩んで、東海大を選びました。ずっとあこがれている田中大貴さんの出身であることが僕にとっては大きかったです。東海大は設備も充実しているし、陸川章さんの指導や考え方を経験したら何かつかめるものがあると思いました。僕の1つ上の代の選手たちがすごいので、その人たちに挑む意味で他の大学に行くのも面白いと思ったんですけど、一緒に練習してやっていくほうが自分のレベルアップに繋がると考えて決めました。

今のチームでは西田(優大)さんが不動のスタートになっています。西田さんは福岡の高校を出て、国体でも一緒にやらせてもらっていました。本当に上手い選手で、自分が持っていないものをたくさん持っているので、まずは西田さんを目標にやっていきたいです。

──高校から大学に上がる時点でコンバートされる選手はたくさんいます。松崎選手はこれまでフォワードをやってきましたが、東海大でポジションを変える考えはありますか?

陸川先生から東海は3ガードだと言われていて、2番ポジションを意識しています。2番(シューティングガード)はここぞという場面で決めるシュート力、コンスタントに決めるシュート力の両方が必要になりますが、ウインターカップでもそうだったんですけど僕は3ポイントシュートの確率に波があるので、そこをもっと向上させて、ドライブもシュートもある選手になりたいと思います。2番ポジションで190cm台はそう多くはないので、そこで強みを出せる選手、というのをイメージしています。

──その先の将来については、どんなイメージを持っていますか? 現地に行って、アメリカでプレーしたいとは思いませんでしたか?

アメリカは、今のレベルの自分では到底行けないと感じました。とにかくレベルアップが必要で、どうレベルアップしていくかは分からないですが、Bリーグでプレーすることに目標を置いて頑張ろうと思います。ただ、いずれ海外で挑戦したいという気持ちになるかもしれません。

僕はバスケをやること自体が好きで、友達と遊びでやるのも楽しいですが、レベルの高い人とやるのが楽しいと感じます。福岡第一でも日本一を目指すという目標を持ってキツい練習をやってきましたが、それでもずっと楽しかったです。プロを目指したらバスケが仕事になりますが、どこで行っても僕は楽しんでやれると思います。

松崎裕樹

「東海大に入ったらムキムキになります(笑)」

──ところで、髪が伸びてきましたね?(笑)

小学校からずっと坊主だったので、坊主が嫌だとは思いませんでしたが、こうして引退して後輩たちの頭を見るとちょっとかわいそうだと思いますね(笑)。もうちょっと伸ばしたいと思っていますが、パーマはかけないです。似合わないタイプの人間なので(笑)。

──大学生になってやりたいことはありますか?

ショッピングとかしたい気持ちもありますけど、一番は試合がしたいです。しばらく試合をやっていないですし、大学バスケは高校バスケに比べて楽しくプレーしている印象があるので。

──次に会う時は東海大の松崎裕樹だと思います。大学になったら「ここを見てください」というのを教えてください。

高校ではあまりウエイトトレーニングをやりませんでしたが、東海大に入ったら追い込まれると思うので、身体がムキムキになるのを見てもらいたいです(笑)。また、海外で試合を見たりしてプレースタイルについて考えるところもありました。190台のガードがいるチームはサイズ的に強いので、自分がそこになれたらいいと思います。プレーの幅を広げて、高校の時よりバリエーションを増やし、フィニッシュの確率を上げて、ドリブルの精度も上げて、レベルアップするつもりです。