河村勇輝

リードを許した前半の課題「3ポイントシュートが多すぎました」

ワールドカップ2023以降では初のFIBA公式戦として、バスケットボール男子日本代表がアジアカップ2025予選Window1でグアム代表と対戦。リードを許して前半を終えるも、後半をわずか20失点に抑えるディフェンスで主導権を握り77-56で勝利した。

先発ポイントガードを務めた河村勇輝は、21分22秒の出場で15得点6アシスト5リバウンド3スティールと攻守に渡ってチームを牽引した。結果だけを見れば21点差の大勝となった訳だが、FIBAランキング26位の日本に対し、76位のグアムという力関係もあり、河村も厳しいコメントで試合を総括する。

「まず、勝つことが何よりチームとして必要だったので、勝って反省できるのは良かったです。ただ、こういったバスケットを続けていては自分たちの目標である(パリ五輪での)ベスト8進出は、難しい戦いになっていきます」

日本の先発はワールドカップで中心を務めた河村、比江島慎に加え、川真田紘也と金近廉の若手、帰化枠ジョシュ・ハレルソンの5人。立ち上がりから、この試合が代表デビューとなるハレルソンの3ポイントシュートなど、外角からのシュートが効果的に決まってリードを奪う。しかし、その後もアウトサイト偏重のシュートセレクションでバランスを欠いた攻めが続く。そして、成功率が落ちることで当然のようにオフェンスが停滞すると、前半の終盤にグアムの猛攻を食らい、35-36と逆転を許してハーフタイムを迎えた。

「立ち上がりは堅かったです。久しぶりの試合だったですし、初めてスターティングファイブになった選手もいたので、そこはポイントガードとしてもっとコントロールすべきところだったと思います」

このように語る河村は、前半の問題点を次のように振り返る。「3ポイントシュートが多すぎました。ペイント内のシュートと3ポイントのバランスはトム(ホーバス)さんとしてもすごく大切にしているところです。前半は3ポイントの試投数だけが増えている状況だったので、もっとペイント内の侵入だったり、得点を増やしていこうと話をしていました」

河村勇輝

「第1クォーターでダメだったら第2クォーターでと、すぐ修正しないといけない」

河村は反省を繰り返すが、彼の非凡なところは後半に入ると切れ味鋭いドライブでペイントに何度も侵入するなど、チームがやるべきことを誰よりも実践したところだ。さらにディフェンスでは相手のポイントガードに前から激しく当たることでターンオーバーを誘発し、グアムオフェンスのリズムを崩した。日本は後半にディフェンス強度が上がったが、そのトリガーとなったのは間違いなく河村であり、守備で勢いを作ることを強く意識していたと明かす。

「オフェンスは、ワイドオープンのシュートを作り続けても確率が上がってこなくて流れが作れなかったです。そこで自分たちのディフェンスから流れを作って、とにかくイージーなバスケットを作れたことは良かったと思います」

今回のアジアカップ予選は、Bリーグのシーズン中に行われ準備期間も短い。また、ワールドカップ以降では初めての実戦でブランクもあり、各選手が所属チームと代表チームでの役割の違いにアジャストするのは簡単ではない。それはトム・ホーバス体制で代表の常連となっている河村にとっても同じで、「スムーズではないです」と語った。

「特に横浜では最近、アシストだったり周りの選手を生かすことをより重視しています。そこを意識しすぎて、トムさんに『空いたらシュートをしっかり打ちなさい』と言われています。そこはもっとスムーズに代表のバスケットに入っていければいいと思います」

新しいメンバーも入っての久しぶりの代表戦で、致し方ない面もあるが、グアム戦は自分たちのやるべきことを遂行し切れない消化不良の内容だった。今回と同じ質のプレーでは、25日の中国戦での勝利は望めないと河村は危機感を強調する。

「今日に出た課題をもっと突き詰めていかないといけません。3ポイントシュートが入らないのなら後半に変えるのでなく、第1クォーターでダメだったら第2クォーターでと、すぐ修正しないといけないです。強豪国相手だと、前半だけですぐ大差をつけられてゲームが決まってしまう可能性もなきにしもあらずなので、そこはもっと早くコート内で気付いて、ポイントガードがアジャストすることが必要だと思います」

『ポイントガードがアジャストすること』と語ったところに、河村の強い責任感、司令塔としての矜持が垣間見える。グアム戦はチーム全体だけでなく、河村個人にとっても本領発揮とは言えなかったが、それでも試合中にアジャストし、大きなインパクトを残した。河村の底力が着実にレベルアップしていることを示した一戦だった。