井手口孝

山口瑛司キャプテン「3冠を目指す新チームを応援してください」

昨年末のウインターカップを制した福岡第一高校の創部30周年と、過去2年間の全国大会優勝を祝う会が217日、福岡市内のホテルで開かれた。激戦を勝ち抜いて4年ぶり5度目の高校日本一を手にした3年生が一堂に会し、保護者や部員の小中学生時代の指導者、OBなど約430人が出席。会場は笑顔であふれた。

福岡第一高校男子バスケットボール部は、199461日に井手口孝コーチによって立ち上がった。創部当初は体育館の床に吐き捨てられていたガムをはがすことが日課だった。

全国屈指の強豪、福岡大学附属大濠をはじめ有力校が居並ぶ中、井手口コーチは1年目から「インターハイを目指す」と公言し、5年目の1998年に初出場を達成。以来代名詞となった堅守速攻のスタイルで、これまでインターハイ、ウインターカップをそれぞれ5度制覇している。並里成(2007年度卒、群馬クレインサンダース)や河村勇輝(2019年度卒、横浜ビー・コルセアーズ)らBリーガーを数多く輩出し、会場には狩野祐介(2008年度卒、佐賀バルーナーズ)や鵤誠司(2011年度卒、宇都宮ブレックス)の姿もあった。

チームキャプテンの山口瑛司は次のように挨拶。「ウインターカップは初戦から苦しい戦いが続きましたが、皆様のご声援とご支援のおかげで優勝を果たすことができました。3年生は引退しますが、新チームがインターハイ、トップリーグ、ウインターカップの3冠を目指して精いっぱい頑張りますので、これからもよろしくお願いします」

ゲームキャプテンの崎濱秀斗は、創部からチームの指導に当たる井手口孝コーチに「30年の長きにわたるご指導を本当にありがとうございました。これからもお身体に気をつけて後輩たちの指導をよろしくお願いします」と感謝の言葉を続けた。

日本代表合宿に参加している河村は、リモートで参加。「ウインターカップは素晴らしい大会になったと思います。この夏は福岡でインターハイが開かれるので優勝してほしい」とエールを送り、崎濱、山口には「みんなを引っ張るために1年間犠牲を払って、チームのことを考えてプレーや練習に取り組まれたと思う」とねぎらいの言葉をかけた。

また、井手口コーチには「可能性と夢を与えてくださった。今があるのは井手口先生のおかげです。大学、Bリーグ、日本代表でプレーさせてもらって福岡第一でやってきたことが自分を作り上げている」とコメント。恩師から「相変わらず優等生なコメントですね」と返され、河村にも笑みがこぼれた。

この日は、昨年度のチームが成し遂げたインターハイと日清食品トップリーグの2冠も祝われた。ダブルキャプテンを努めた轟琉維(東海大)と城戸賢心(早稲田大)がリモートで登場。昨年末のウインターカップを会場で観戦していた2人は、「苦しいことが多かったと思うけど日本一を誇りに思ってください」(轟)。「昨年末のウインターカップは鳥肌が立った。福岡第一で3年間やってきてよかった」(城戸)とコメントした。

福岡第一

井手口コーチ「福岡第一高校に来てくれて本当にありがとう」

昨年末のウインターカップ、福岡第一は初戦の仙台大学附属明成戦から1試合ごとに力をつけるような勝ち上がりを見せた。特に準々決勝の東山戦は『大会史に残る名勝負』といっても過言ではない内容だった。

井手口コーチは、第4クォーターのタイムアウトで崎濱に「ダンクを決めてこい」とゲキを飛ばしたエピソードの裏側について触れた。「直前にバックボードに当ててタップをしようとする独創的なプレーを試みていたから、それなら『ダンクを』と言いました。硬くならずにプレーできるような一言を、と思って」。意図を明かして、ほほ笑んだ。

会の中では、30周年の節目に1〜3期生と創部当時を振り返る一幕もあった。井手口コーチが「戦友です」と紹介する当時の部員、マネージャーたちは「先生の指導のもと、みんなで助け合い、励まし合いながらやってきました。週末には56試合していました」と当時のエピソードを語った。

締めくくりとなる井手口コーチの挨拶では、師と仰ぐ中村和雄さん(元女子日本代表コーチ)をはじめ、小中学校の指導者やメディア、スタッフ、家族、保護者と各関係者に感謝の言葉を繰り返し、「30年はあっという間でした。卒業生、生徒のみんな。福岡第一高校に来てくれて本当にありがとう」と声を詰まらせた。