宮崎早織

先発に抜擢「恩塚さんの気持ちにしっかり応えられたのがうれしいです」

バスケットボール女子日本代表がパリ五輪世界最終予選(OQT)の最終戦でカナダと対戦。最後まで一進一退の息詰まる熱戦となったが86-82で競り勝ち、OQT通算2勝1敗でパリ五輪への切符をつかんだ。

この試合、日本代表はインサイド陣がファウルトラブルに陥るなど、カナダのサイズを生かしたゴール下の攻めを止めることができずに苦しんだ。また、カナダの徹底的な対策によって、最大の武器である3ポイントシュートを満足に打つことができなかった。しかし、カナダが長距離砲を潰しにくることで生まれたゴール下へのスペースを積極的なアタックで突くことで得点を量産した。

特にドライブで目立ったのが司令塔の宮崎早織で、2点シュートを7本中7本成功させて16得点4アシストをマーク。また、守備でも前から激しくプレッシャーをかけ続けてカナダのガード陣を消耗させるなど、日本の目指した走り勝つバスケットボールを体現した。

試合後の会見で、宮崎は「本当にホッとしています」と語る。振り返れば75-81で敗れたハンガリー戦で、宮崎はフィールドゴール9本中6本成功の15得点6アシストと活躍したが、2点を追う残り24秒に逆転を狙った3ポイントシュートを放つが失敗した。責任感の強い宮崎は、「ハンガリー戦で選択ミスをしたことで自分を責めていました」と振り返るが、仲間の言葉によって引きずらずにカナダ戦に臨めたと明かす。

「やっぱりリュウさん(吉田亜沙美)だったり、チームメートにうれしい言葉をかけてもらって気持ちを切り替えられたのが良かったと思います。リュウさんに『あの選択肢ではなかったよね』と話したら、『でもその前に攻めていたのはユラ(宮崎)だから、打たないで後悔するよりは、打って後悔する方がよかった。でも2ポイントという選択肢もあったよね』と言ってもらえました。そこで『あっ、そうだな』と思って、頭を叩かれましたけど(笑)、それがすごく私の胸に響きました」

ゴール下にスペースが生まれていたとはいえ、サイズと機動力を備えたカナダのインサイド陣のプレッシャーを受ける中で、レイアップをミスなく決め続けるのは簡単なことはない。だが、世界の高さを相手にしても決め切る練習をずっとしてきた宮崎には確かな自信があった。「ずっと(鈴木)良和(アシスタントコーチ)さんとワークアウトしてきたので、何の迷いもなかったです。私が行くことで、みんなが空いてくれたらという思いでアタックしました」

銀メダルを獲得した東京五輪メンバーの1人である宮崎だが、準決勝と決勝であわせて9分のプレータイムだったことが示すように出番はかなり限定的だった。しかし、今大会では先発ポイントガードを務め、3試合で平均26.5分出場、13.0得点、6.0アシストと誰もが認める中心選手として躍動した。宮崎は言う。「(2022年の)ワールドカップから恩塚さんが起用を続けてくれ、この大会では私をスタメンとして使ってくれました。恩塚さんの気持ちにしっかり応えられたのがうれしいです」

そして「本橋(菜子)、町田(瑠唯)、吉田のあとのガードは、本当に苦しいんですよ。でもその中でも、菜子さんとリュウさんが声をかけ続けてくれたのが私の中で大きかったです。本当に心強いと思いました」と、満面の笑みを見せた。

宮崎が言及したように、これまで女子日本代表の好成績は一流のポイントガードの活躍によって紡がれてきた。そして日本代表をパリ五輪へ導く立役者となった宮崎も、この系譜の仲間入りを果たした。