林咲希

恩塚HC「個々で戦う相手に対し、日本はチームで走ってチームで削っていく」

現地2月11日の午前、バスケットボール女子日本代表はパリ五輪世界最終予選(OQT)の最終戦となるカナダ戦前の最後の練習を終えた。現在1勝1敗の日本は、カナダに勝利すれば自力でパリへの切符を獲得する。

日本はスペインとの初戦で持ち味の3ポイントシュートを効果的に決めると、前から激しく当たりボールの出所を抑えるディフェンスが機能と、理想のバスケットボールを遂行して86-75と快勝した。しかし、2試合目のハンガリー戦は、前から思うようにプレッシャーをかけ切れずにインサイドで失点を重ね、オフェンスでも相手のスイッチに苦戦してボールムーブが停滞し75-81で敗れた。

カナダはワールドカップ2022やトレーニングマッチで何度も対戦している、お互いに手の内を知り尽くしている相手だ。その中で、恩塚亨ヘッドコーチは勝つために必要なことをこのように語った。「カナダとは5試合くらいやりました。(勝つためには)走り勝つというコンセプトにあらためて戻ります。カナダは個々の能力は高いですし、フィジカルは強いです。ただ、チームバスケではないです。個々で戦う相手に対し、日本はチームで走ってチームで削っていく。そういう戦い方をやり抜いて勝つ準備をしてきました」

そしてキャプテンの林咲希は、「勝ち切ることしか考えていないです。カナダも走ってきますが、自分たちは絶対に走り勝てると思うので、粘って40分間やり続けたいと思います」と決意を語る。

日本のことを熟知するカナダだけに、エースシューターである林は当然のように徹底マークを受けることが予想されるが、林はそれを逆手に取ろうとしている。「そうやってキツくマークしてくれば、他の選手が空くチャンスがより生まれます。自分がスクリーナーになったり、ゴール下へとダイブするプレーが効いてきます。まずは相手の体力を奪うという意味で、自分のクリエイティブな動きで、ガード陣のスペースを作りたいです」

そして、代名詞の3ポイントシュートを決めて、チームを勢いつづせたい気持ちももちろんある。「ハンガリー戦の時は空いているか、空いていないかの状況でちょっと迷ってしまったところがありました。スペイン戦の時は本当に打つことしか考えていなかったです。(スペイン戦と同じ気持ちの持ち方は)自分がやるべきことです」

最後に林は、激しいコンタクトが続く我慢比べで後手に回らないことが勝利の鍵になると続けた。「1対1の対決での粘り合いだと思います。そこは絶対に負ける気はないです。そこを勝ち切って相手をイライラさせれば絶対に日本のペースになってきます」

五輪に出場できるか、できないかでは、天国と地獄程の大きな違いがあり、選手たちには尋常ではないプレッシャーがかかる。恩塚ヘッドコーチは「そもそも重圧からは逃れられないし、向き合ってほしいです」と語り、これまで積み重ねてきた努力の成果を信じてコートに立ってほしいと締め括った。

「自分の調子のことを気にするのではなく、いかに自分が自信を持ってプレーするかに集中してほしいです。自信とは、自分がやってきたことを信じることだと思っています。だから、選手たちにはこれまでを振り返って、午後の試合に来てほしいと話をしました」

このカナダ戦はパリ五輪出場のためだけでなく、女子バスケットボール界の歴史を紡ぐためにも絶対に負けられない試合だ。彼女たちが1つの大きな壁を乗り越える瞬間を楽しみに待ちたい。