「久しぶりに12番のユニフォームを着てコートに立てて楽しかったです」
パリ五輪最終予選(OQT)が開幕し、女子日本代表は大事な初戦でFIBAランキング4位の格上スペインに86-75で快勝した。
日本代表は6本成功の林咲希を筆頭に、チーム全体で15本の3ポイントシュートを成功。そして2ポイントシュートは22本中16本成功が示すように、ゴール下でのイージーシュートのチャンスを作り出した。これは活発なボールムーブによる質の高いチームオフェンスを遂行できたからであり、その立役者となった1人が吉田亜沙美だ。女子バスケ史上屈指の司令塔だが、今シーズンの開幕前に2度目の現役復帰を果たした大ベテランということで、当初は主力の一員としてどこまで貢献できるか懐疑的な見方があった。
強化合宿中には本人も「多分、私の役割は2、3分出てチームの流れを変える部分だと思います」と、かなり限定的な出番になると見ていた。しかし、実際には13分3️秒のプレーで3アシスト、2リバウンドを記録。そして、視野の広さを生かしたテンポの良いパス回しでオフェンスに良いリズムをもたらすなど、スタッツに現れない部分での貢献が光った。
スピードと長距離砲、日本にとって持ち味全開となった会心の勝利について、吉田は試合序盤から爆発した林の3ポイントシュートが大きかったと振り返る。「宮崎(早織)だったり、私だったりがちょっと緊張した部分がありましたが、それをキャプテン(林)が『大丈夫だよ』というメッセージを込めながら3ポイントシュートを決めたプレーがチームを落ち着かせたと思います。出だしは悪くなかったですけど、ちょっと固いなと感じるところはありました。シューターがああやって決め切ってくれるとみんながホッとします」
そして、自身が意識した役割を「後から出て流れを変えること、宮崎を少しでも休ませることが私の役割だと思います。そして前から相手のポイントカードにプレッシャーをかけるのがディフェンスのスタイルなので、そこを徹底してやります」と語る。
また、13分の出場時間とワンポイントではなくローテーションの一員として勝利に貢献した点について聞くと、「合宿ですごくタフな練習をして、体力面、フィジカル面は自信がついてきたのであまり心配はしていなかったです」と明かし、更なるパフォーマンス向上への手応えを得ている。
「ミスがちょっと多かったので明日、修正していこうと思っています。シュートタッチも悪かったので明日の朝の練習でしっかり感覚をつかんでやっていきたいです。ゲームの体力はまだまだだと思いますが、初戦でしたし、そこは徐々に慣れていくと思います」
吉田にとってこの試合は、前回のOQT以来となる日本代表の試合だった。「久しぶりに12番のユニフォームを着てコートに立てて楽しかったです。このメンバーとバスケットができていることが本当に幸せです」と笑顔を見せる。
ただ、世界の厳しさを知る百戦錬磨のベテランは、明日のハンガリー戦に向けしっかりと気持ちを切り替えている。「相手のホームですし、そこに飲み込まれないようにしないといけないです。喜ぶところは喜びますけど、明日に向けてしっかり気持ちを切り替えてやっていきたいと思います」
今日の試合によって、日本のシューター陣に対するマークはより厳しくなってくるだろう。だからこそ、よりスペースは広くなり、吉田の変幻自在なパスをより力を発揮する機会は増えていく。日本代表、そして吉田のさらなる大暴れへの期待が高まるスペイン戦の快勝劇だった。