ドノバン・ミッチェル

「一番大事なのは、ここで満足しないこと」

キャバリアーズは33勝16敗で、東カンファレンス首位のセルティックスに次ぐ2位と躍進している。8連勝の後、1敗を挟んで7連勝と絶好調。現地2月7日のウィザーズ戦は接戦となったが、ともに守備の強度を上げて得点が伸びなくなった第4クォーターに、ドノバン・ミッチェルが14得点を固め取りしたのが決定打となり、114-106で勝利した。

ミッチェルはフィールドゴール25本中14本を決めて40得点を記録。接戦の第4クォーターに14得点を挙げたのは、まさに『エースの働き』と言える。各ポジションにタレントは揃っているが、勝負どころでボールを託すのはミッチェルであり、彼はその信頼に応えている。

「僕らは自分たちのアイデンティティを見つけ出した」とミッチェルは言う。「昨シーズンとはメンバーも違うし、プレーも違う。6週間から8週間のケガをする選手が出れば、またやり方は変わってくる。時間はかかったけど、僕らはみんなで協力して自分たちのバスケを見いだし、自分たちのやりたいプレーができるようになっている」

昨年12月、エバン・モーブリーとダリアス・ガーランドが揃って長期戦線離脱となった時点で、キャブズのシーズンは終わったとの声もあった。続いて出てきたのは、ミッチェルをトレードに出すという予測だ。キャブズとミッチェルの契約は2026年まで残っているが、最終年はプレーヤーオプション。彼が移籍を要求すれば、キャブズはそれ相応の見返りとトレードせざるを得なくなる。ジャズがミッチェルの放出を決めた2022年夏、その行き先はニックスが有力視されていた。ニックスでなくても大きなフランチャイズの人気チームのどこかが行き先となるはずだったが、ジャズは最も良い条件を提示したキャブズにミッチェルを引き渡した。

以後、「ミッチェルがキャブズの環境に満足せず、移籍を選択する」との噂が常に出回っている。ミッチェルは本当にキャブズに満足しているのだろうか? 勢いはあっても優勝候補としては経験不足は否めないし、レブロン・ジェームズとともにNBA優勝の経験があるとはいえ、クリーブランドは小さなマーケットで、スター選手が生活するには物足りないと感じるかもしれない。

ただ、ミッチェルが去就について確たる言葉を残していなくても、日々の試合に打ち込む姿勢を見れば、その意図は明らかだ。移籍を望むのであれば、12月から1月にかけて気の抜けたプレーをしたり、どこかが痛いと言い出して休めば、「ミッチェルがキャブズの環境に満足せず、移籍を選択する」との噂に信憑性が出てきていただろう。

だが、ミッチェルはそうしなかった。言葉ではなく行動で示した。ウィザーズ戦の後、「トレードデッドラインを明日に控えた今の気持ちは?」と問われたミッチェルは、「明日だと知らなかったことが、僕の気持ちを表していると思う。僕だけじゃなく、このチームにトレードデッドラインについて気にしている者はいないよ」と答えた。

「昨シーズンの僕らをプレーオフの結果で判断したがるのは分かるけど、キャンプが始まる3週間前にトレードされて新しいチームで再出発して、レギュラーシーズンで51勝を挙げたのは並大抵のことじゃない。『これが僕たちだ』という感じだった。そして今シーズンはマックス(ストゥルース)やジョージ(ニアン)の補強、サム・メリルの台頭もある。みんな健康にプレーできているし、まだまだ成長できる。僕らは今、16試合で15勝しているんだ。どの試合も簡単には勝てないけど、僕らがこの先、最高のバスケをするのは間違いない」

チームの指揮を執るJ.B.ビッカースタッフは、「才能があって結束し、層も厚いこのチームを変える理由はない」と言う。「周囲に流れる情報で自分たちを判断しないようにしている。ただウチの選手たちいが良いバスケをしているのを見るだけでいいんだ」

ミッチェルは静かに、それでも力強く語った。「一番大事なのは、ここで満足しないこと。まだ2月7日だからね」