ドック・リバース

アデトクンボは歓迎「経験ある人物の助けが必要」

バックスはエイドリアン・グリフィンを解任し、後任にドック・リバースを招聘した。今シーズン開幕前に迎え入れたばかりの新人ヘッドコーチを、30勝13敗で東カンファレンス2位と結果を残していたにもかかわらず早々に見切りを付けたバックスの判断は疑問視されている。NBA優勝から3年が経過し、ヤニス・アデトクンボを取り囲む主力の高齢化が進む中で『マンネリ化』しており、そこから脱却するための新たなアイデアを持つ若いヘッドコーチを抜擢したはずが、たった43試合で考えをあらためた。「リバースにチームを託すぐらいなら、マイク・ブーデンフォルツァーを続投させておけばよかった」の声もある。

しかし、グリフィンの新たなスタイルが選手に受け入れられず、チームが空中分解寸前となれば、フロントとしては手をこまねいて見ているわけにいかない。アデトクンボだけを残し、クリス・ミドルトンやブルック・ロペスといった優勝に貢献したベテランを一掃するロスターの若返りと同時にグリフィンのバスケへの切り替えを行っていれば上手くいったのかもしれない。彼らは今まで結果を出してきたスタイルを捨てられない。多少の方針転換は受け入れても、全く違うバスケには対応できない。

グリフィンとリバースはあらゆる面で正反対だ。リバースに革新的な戦術はない。ベテランのスター選手たちを気分良くプレーさせて、その持ち味をできる限り引き出すのがリバースのやり方。教養と人間味があり、選手の良き理解者としてリーダーシップを発揮する彼は、おそらく選手たちの要望を受け入れ、ブーデンフォルツァー時代のプレースタイルに回帰することでチームを立て直そうとするだろう。そこから何かを大きく変えようとはせず、必要に応じた微調整を重ねることでプレーオフまでにチーム力を高めていくはずだ。

リバースは就任会見で「ここに戻って来るのは夢だった」という言葉で地元メディアの心をつかんだ。彼はマーケット大の出身で、その時はミルウォーキーで暮らしていた。「私はここでバスケの知識のほとんどを学んだ。それはつまり、人生を学んだということだ」

昨シーズン限りでセブンティシクサーズのヘッドコーチを辞めた彼には、これまでいくつかのオファーを受け取っていたが、どれもまともには受け止めなかったそうだ。解説者をやりながら、ゴルフなどの趣味に時間を割くリラックスした生活を彼は楽しんでいた。

気が変わった理由を彼は「ヤニスとデイム(デイミアン・リラード)の存在だよ」と語る。「バックスはベテランと中堅で構成されているチームだ。シーズンのこの時期に飛び込むのであれば、ある程度は出来上がっていて、私が良い形で影響を与えられるチームしかないと思っていた」。もともとバックスは優勝候補の一角であり、シーズン途中の指揮官交代ということでプレッシャーは大きい。それでもリバースは「期待されていないよりは、期待されているほうが良い」と語る。

そしてアデトクンボは、リバースをこう歓迎している。「僕たちはNBAファイナルにまた行きたい。そのためには経験ある人物の助けが必要だ。彼はそういう人だと思う」

現地1月29日のナゲッツ戦から、リバースはバックスの指揮を執る。