東藤が目指す「変化球みたいな感じ」の立ち位置

バスケットボール女子日本代表は2月8日から始まるオリンピック世界最終予選(OQT)に向け、強化を進めている。

今回は20名が第5次強化合宿に招集された。最年長は2度の引退を経て代表復帰を果たした36歳の吉田亜沙美で、最年少は現役高校生で18歳の絈野夏海。平均年齢は25.5歳となった。

東京オリンピックに最年少で選出された東藤なな子は23歳に。現メンバーでも年少の部類に入るが、常に代表に選出され続けてきたこともあり、彼女は自身の立ち位置を深く理解している。「世界と戦ってきた回数が増えてきて、世界に対して通用するプレーやしないプレー、課題になるところが自分の中で明確になってきました。自分で課題をクリアするとともに、チームとしての課題克服に影響を与えられるような人になれたらいいなと思っています」

日本の指揮を執る恩塚亨はチームのコンセプトを『走り切るシューター軍団』とした。これはこれまでと同様に、高速トランジションと3ポイントシュートを軸とすることを意味している。だからこそ東藤もシュート精度を上げることが代表入りの必須条件だと分かっている。「恩塚さんのバスケットはシュート力のことをコンセプトとして挙げていたので、シュート力のある選手が多い中で、まずは自分もシュート力をアピールしていかないといけません」

とはいえ、走力とシュート力を持ち合わせている候補選手は多いため、そこで差別化された持ち味を発揮することも求められる。東藤の場合、それはフィジカルの強さを生かしたドライブだ。

「自分だけにある持ち味で、アジア競技大会でも通じたドライブやフィニッシュに行き切る力というのは、やっぱり自分の持ち味だと思っています。シュート力も見せていかなきゃいけないし、持ち味も忘れずにアピールしていかなきゃいけません」

そして、3ポイントシュートの精度が上がれば上がるほど、自身の武器が最大限に生きてくると確信している。「誰でも3ポイントが打てて決めれる。その外の成功率の高さがないと中も生きてこないし、そうじゃないと世界と戦えないというのは前提としてあります。シュート力は絶対に必要で課題とも思っていますが、自分が出たことによって、3ポイントだけじゃなく中にアタックして収縮されるとか変化球みたいな感じ。相手からしたらリズムを変えてきたような感覚に陥るプレーができたらいいなと思っています」

「マイナスにならないよう、プラスに考えるようにしています」

恩塚ヘッドコーチは現在の日本の弱点について「1番大きな課題はペイントエリアのフィニッシュの確率だけじゃなく、選択やサポートとかの部分が著しく敗因になっているんじゃないか」と、分析している。そのため、ペイントタッチができ、ゴール付近の合わせも得意としている東藤の存在は、日本の課題を解決する上で欠かせないと言える。東藤も「フィニッシュ力は自分の1番の強みなので継続していきたい」とこだわりを見せるとともに、周囲との連携に関してもさらなる向上を期している。

「停滞しないバスケを求められているので、全員が先を読んでこの人はこういうプレーをするというのをやりながら詰めていくしかないと思っています。時間をかけてコミュニケーション取って、一つひとつのプレーにこだわる。それを全員の共通認識としてやっています」

代表活動は当然ながら、代表の生き残りレースという側面もあるため、常に精神的なプレッシャーとも戦わなければならない。実際に代表常連の宮崎早織は強化合宿を「苦しい」と常々表現してきた。東藤も少なからずネガティブな気持ちになる時もあると言うが、責任感を持ってこの機会をポジティブに受け止めている。

「自チームではプレータイムも長いですし、ある程度リラックスできますが、ここは全員がトップレベルで選考もかかっているのである程度はプレッシャーがかかります。それでも、トップレベルの選手とできて自分の課題を伸ばせたり、周りの選手のうまいところを盗めたりできます。A代表に初めて入った時から、そういう気持ちは忘れずに持とうと思っていました。今回は吉田(亜沙美)さんも入ったので、吸収できるところは吸収していきたいです。マイナスにならないよう、プラスに考えるようにしています」

初心を忘れない東藤が、最高峰の選手たちとの争いの中でさらにレベルアップできれば、日の丸のユニフォームは彼女のモノとなるだろう。そして、それはさらなる日本の強化へも繋がっている。