デヤン・ミロセビッチ

ヨキッチを育て、3年前からウォリアーズで指導

ウォリアーズのアシスタントコーチを務めるデヤン・ミロセビッチが心臓発作のため死去した。現地1月17日のジャズ戦のためにソルトレイクシティに遠征したチームと行動をともにしていた彼は、チームディナーの最中に倒れ、病院に運ばれたが助からなかった。享年46歳。

ウォリアーズは声明を発表し、その中でスティーブ・カーは「突然の死に我々は打ちひしがれている。デヤンは私が知る中で最もポジティブで素晴らしい人物の一人で、その情熱とエネルギーで毎日に喜びと光をもたらしてくれた。彼の妻と子供たちのことを考えると、喪失感は計り知れない」とつづっている。

ミロセビッチはセルビア出身の元スター選手で、引退後に指導者に転身。メガ・バスケットのヘッドコーチを務め、ニコラ・ヨキッチやイビツァ・ズバッツを指導した。彼の在任8年間の教え子でNBAのドラフト指名を受けた選手は11人になり、5人が実際にNBAへと活躍の場を移している。

同時に彼自身もNBAでコーチを務めることを望み、いくつかのチームでサマーリーグのアシスタントコーチを経験。2021年にウォリアーズのアシスタントコーチに就任し、3年目を迎えていた。

かつてパワーフォワードとしてプレーした彼が得意とするのはビッグマンの育成で、ウォリアーズでの1年目にはケボン・ルーニーをリバウンダーとしてブレイクに導くことでNBA優勝に貢献した。また多くの関係者が証言しているのが常にポジティブな彼の姿勢で、どの選手にも「好きでなければ努力は続けられない。本当に素晴らしい活躍ができる選手は、この競技を心から愛している者に限られる」と説いた。

ラプターズを率いるダーコ・ラジャコビッチは、同じセルビア出身で年齢も近く、10代の頃からお互いを見知った仲だ。「選手として、人間として、夫として、コーチとして、私が尊敬してやまないお手本のような人だった。セルビア代表のヘッドコーチになる夢を語っていたのに、それが実現しなくて残念だ」と語っている。

キングスを率いるマイク・ブラウンは、ウォリアーズが優勝した2021-22シーズンにミロセビッチとともにアシスタントコーチとしてスティーブ・カーを支えていた。カーからの連絡で友人の死を知ったというブラウンは、「どんな人でも気持ちの浮き沈みはあるものだが、彼は常に明るくて前向きだった。どの選手、コーチ、スタッフとも分け隔てなく付き合い、誰からも愛され、彼もみんなのことを愛していた」と語る。

「みんなつらい思いをしているだろう」とウォリアーズの元同僚たちに思いを馳せるマイク・ブラウンの眼鏡の奥では涙が光っていた。ジャズ戦は延期となり、ウォリアーズは試合をすることなくサンフランシスコに戻って来るが、2日後には次の試合が控えている。「つらいだろうが、人生では何があろうと進み続けなければならない」。そう語るブラウンを含め、多くの選手やコーチが感情を抑えてそれぞれ自分の役割を果たさなければならない。現地17日、ジャズvsウォリアーズは延期となったが、他の試合会場では彼の死を悼むアナウンスが流れ、選手たちが黙祷を捧げている。