フィールドゴール成功は14分の3本、3ポイントは5分の0本
1月10日の天皇杯クォーターファイナル。横浜ビー・コルセアーズは宇都宮ブレックスに65-81で敗北した。ビハインドの展開が続く中、第3クォーターに4点差まで迫ったものの、宇都宮の組織力と比江島慎、D.J.ニュービルの個の力に押し切られ、昨年のベスト4という成績は超えられなかった。
「優勝のチャンスが1つなくなってしまったことが本当に悔しいです」。記者会見でこのように話し始めた河村勇輝は、敗因を「エースの差」とした。「比江島選手やニュービル選手が大事な場面でしっかりとシュートを決め切ったけど、僕は決め切れなかった。これが点数の差、負けの大きな要因の1つだと思うので、こういった一発勝負で力を出しきれなかったことが本当に情けないし、チームメートに申し訳ないという気持ちがすごくあります」
この後の質疑応答でも、河村は何度も「敗戦は自分の責任」という主旨のコメントを口にした。河村のこの日の個人スタッツは19得点6アシスト。14本放ったフィールドゴールのうち、成功したのはわずか3本で、3ポイントシュートは5本中1本も決められなかった。
ペイントアタックで得た13本のフリースローをすべて沈めてはいるが、「入ると思って打った」と断言する3ポイントシュートをすべて外したこと、そして一発勝負の戦いでチームを勝たせられなかったという事実の前では、取るに足らないことだったのだろう。
「どうしてそこまで自分に矢印を向けられるのでしょう?」と問われ、河村は言った。
「シーズン前から、タケさん(竹田謙GM)は僕を中心としたチームを作ってくれていると思っていたので、責任を持つべき立場だと思っています。 僕のような若い選手にそういった役割を持たせてくれるクラブはなかなかないし、横浜BCに残った理由の1つだったので。環境を作ってくださってる関係者の皆さんには本当に感謝したいし、結果として天皇杯では恩返しができなかった。本当に申し訳ない気持ちが大きいです」
青木HCが分析する敗戦理由「自信を持ってシュートを打ち切るメンタルが必要」
河村はこのように話すが、敗戦理由は当然彼だけにあるものではない。青木勇人ヘッドコーチはまず、ビッグマンのペイントエリア内でのフィニッシュ力について言及した。
「ニュービル選手と比江島選手のスコアを止めるというよりは、彼らを起点とするプレーを自由にやらせないことにフォーカスし、彼ら以外の得点はだいぶ削れたと思います。(同じように試合前に想定していた)スイッチディフェンスで生まれたミスマッチをビッグマンが突くというプレーもできていたのですが、そこがシューティングパーセントにつながらなかったことが結果を左右したと思います」
ウイング陣のシュート決定率も勝敗に大きく影響した。20点近くリードされた第4クォーター。ポイントガードの河村と森井健太を同時にコートに送り出し、河村を得点に専念させた理由について問われると、青木ヘッドコーチは「ウイングの得点で勝負することが理想ではありますが、今日は確率が上がらなかったので」と回答。「(ウイング陣が)打てるところでドリブルして、自らタフな状況に持って行っているシーンがありました。自信を持って打ち切るメンタルが必要だと思います」
また、優れたコントロール力とディフェンスを持っていながらシュートに課題がある森井については「ノンシューター(シュートを打たない選手)とみなされて、かなり遠い場所にいる選手にヘルプに行かれることが多い」と現状を説明した後「ノンシューターというのは周りが思ってるだけで、僕はしっかりシュートを打てる人間だと思って試合に出していますし、もっと打ってほしいです」と続けた。
試合後、河村はセミファイナル進出を決めた宇都宮の写真撮影の様子を見つめていた。理由を問われると以下のように説明した。
「一発勝負の戦いは実力だけではなく、その日のヒーローなどで結果が変わってくる大会でもあると思っています。チーム、ポイントガードとしてそういったヒーローを作り出すことができず、自分もそれになれなかった悔しさがありました。ブレックスさんは本当に素晴らしいチームだったと思います。次に進んでいく常勝チームをしっかりと目に焼きつけて、次は自分たちがああいった場に立つんだと心に刻んでいました」
B1得点ランキングのトップをひた走る孤高のエースは、天井知らずの成長を見せている。しかしバスケットボールは1人のスターで勝てるスポーツではない。12勝16敗。中地区6位。チャンピオンシップ進出の道はまだ閉ざされていない。横浜BCがここから意地を見せるためには、河村以外の選手たちのさらなる覚悟が必要だ。