絈野夏海

緊張の代表デビュー戦で持ち味を発揮

高校3年生ながら女子日本代表候補に入った岐阜女子の絈野夏海が『WリーグSUPERGAMES ~To the World~』で早くも代表デビューを飾った。

トランジションから持ち味である3ポイントシュートを沈めると、外角の警戒が高まった際にはドライブからレイアップも決める。また、ピック&ロールから馬瓜エブリンのミドルシュートをアシストするなど、ハンドラーとしても高いレベルであることを証明した。絈野はデビュー戦をこう振り返る。

「最初はすごく緊張してしまい、固いシュートから入ってしまったんですけど、チャンスの時に3ポイントとドライブをしっかり決め切れて、正直うれしいです」

絈野を一躍有名にしたのは、昨年末に行われたウインターカップの桜花学園戦だ。第4クォーターだけで7本の3ポイントシュートをすべて沈めてゲームハイの37得点を挙げ、最大21点差を覆す大逆転勝利の立役者となった。特筆すべきはその3ポイントシュートのほとんどがキャッチ&シュートではなかったことで、スクリーンを使ってのプルアップやステップバックスリーなど、タフな長距離砲を次々と沈めていった。

恩塚亨ヘッドコーチも彼女が持つ、その特別な能力に惹かれて合宿に呼んだという。「3ポイントシュートに秀でた選手ですが、それだけではまだここに呼ぶのは早いと思って声をかけません。彼女が特別なのはプルアップでスリーが打てることとステップバックでシュートが打てること。特別な技術であり能力だと思っているので、試してみたいと思って招聘しました」

合宿開始時は「高校生で唯一選んでいただいたので、その環境に感謝しながら、自分に取り入れられることはしっかり取り入れて、世界で戦うためにどのようなことをすればいいのかをしっかり考えていきたいと思っています」と意気込んでいた。高校とは違う強度の高さに苦戦もしたが、「簡単にボールをもらえなかったり、ズレも作りにくいので、自分がスクリーナーになってチャンスを作ったり、ワンクッション入れてプレーすることを学んでいます」と創意工夫して自身のスキルアップに繋げ、デビュー戦でいきなり持ち味を発揮したことで、順応能力の高さも垣間見せた。

「厳しいプレッシャーの中でも決め切っていきたい」

絈野の持ち味の一つである3ポイントシュートは、高校1年時から年々精度を高め、リリーススピードも上げていったことで武器と化した。それは恩師のアドバイスと環境によって作り上げられたと絈野は言う。

「安江(満夫)先生からシューターと任命された1年生の時から、キャッチからシュートまでを速くする練習をしてきました。安江先生や面高(春奈)コーチにNBAの動画を見せていただいて、こういうシュートを打てたら良いのではないかとアドバイスをいただきました。自分の成長に合わせて、どんどん課題を提供していただいたのが良かったと思います」

デビュー戦で代表候補に選ばれるだけの力を示したものの、後半はフリーのシュートチャンスで決め切れないなど、もちろん課題も残った。OQTという大一番が迫っているからこそ、絈野は現状に満足することなくさらに上を目指している。

「空いた時に打ち切れたのは良かったですけど、シュートを決めきるところがまだ足りていないと思うので、厳しいプレッシャーの中でも決め切っていきたいです。(OQTはオリンピックの)切符を取るための試合で、自分はまだ全体的に実力が足りていないので、もっと上げていかないとチャンスがないと思います。チャンスを作るために、もっと自分に負荷をかけてやっていかなきゃいけないというのは実感しました」

同じポジションであり、不動のキャプテンの林咲希の勝負強さに惹かれ、「必ず苦しい状況で決め切るところは見習いたい」と絈野は言う。練習中からウインターカップで見せたクラッチシューターぶりやスキルの高さを披露できれば、OQTの舞台で日の丸を背負う可能性は十分にあり得る。