宮崎早織

「フィジカルに負けないスピード、決め切る力など成長した部分をOQTを見せたい」

女子日本代表は、2月に行われるパリオリンピック最終予選(OQT)に向けて強化合宿を行っている。今回のメンバーを見ると、昨秋に2度目の現役復帰を果たした吉田亜沙美など、ポイントガードをこなせる選手が多く名を連ねている。

その中でも山本麻衣と宮崎早織は、恩塚亨ヘッドコーチ体制になってから主力として安定したプレータイムを確保している。これまでの起用法を考慮すれば、宮崎のOQT出場は濃厚だろうが、本人にそういった気持ちはない。「今回、ガード陣はすごい人数が選ばれているので、争奪戦がすごいなと思っています。そこも頑張っていきたいです」

ただ、同時にメンバーに選ばれた際には次のようにチームを牽引していきたいと語る。「恩塚さんと長い間やり続けてきたので、本当に恩塚さんがやりたいバスケットをまたOQTで表現したいです。スピードの部分はすごい恩塚さんも言ってくださっていますし、私自身もすごい武器だと思っています。海外の選手のフィジカルに負けないスピード、決め切る力など成長した部分をOQTで出せたらいいなと思います」

今回の合宿で、宮崎の大きな刺激となっているのは、吉田の存在だ。宮崎にとって吉田は、2014年から2020年にかけてENEOSサンフラワーズで一緒にプレーした元チームメートであり師匠だ。高校卒業後にENEOSに加入した宮崎は、日本代表の絶対的な司令塔であったあこがれの存在である吉田に日々の練習で何度もコテンパンにされ、多くのアドバイスをもらうことで成長してきた。そして吉田がチームを去った後にENEOSの先発ポイントガードを務め、結果を残すことで東京オリンピックの日本代表に選出され、今では代表の常連となっている。

宮崎早織

吉田について「選手たちをまとめる力はあらためてすごいと思います」

宮崎は初めて吉田と一緒の代表活動についてこのように語る。「代表で一緒にやるのは初めてですけど、ENEOSにいる時とそこまで変わらない感じです。でも、近くにいてくれるだけで、私的にはすごく助けられます。選考で負けたくない思いはありますけど、でも1番はやっぱり楽しいですね」

そして、吉田のメンバー入りを知った時、本当に来てくれるのか半信半疑だったと明かした。「最初は本当に来てくれるのかなと思っていました。『いや、私も年なんで』とか言って、来ないこともあるのかなと(笑)。でも、やっぱり求められたらしっかり来てくれますし、選手たちをまとめる力はあらためてすごいと思います」

この発言が示すように、ENEOS時代から続く2人の仲の良さは全く変わらない。宮崎がメディア対応をしている際、横を通り過ぎた吉田を見ると、「今の代表チームでは吉田さんも新人なので、私がいろいろと喝を入れて、モップもやらせようかなと思っています(笑)」と、冗談を言うくらいだ。

吉田が去った後のENEOS、そして日本代表で主力の地位を確立してきた宮崎だが、吉田に対するあこがれの気持ちは昔と同じだ。だからこそ今の2人の力関係についても「一歩後ろにいて、『そろそろ私の出番なんじゃない?』と思いながら追いかけている部分はあります」と答えた。

そして、あこがれであり、尊敬する選手と一緒にプレーできることの喜びを強調する。「ちょっとずつ対等にやれているのかな、とは思いますけど、やっぱり昔からずっと追いかけてきた選手です。今でも追いかけることが1番楽しいですし、面白いなと思います」

今回のOQTは、間違いなく恩塚体制になってから最もプレッシャーのかかる大一番となる。だからこそ、吉田が持つ百戦錬磨の経験や周囲をまとめる力は、彼女がコートに立たなくても大きな支えとなる。そして、この恩恵を最も受ける1人は宮崎だろう。日の丸を背負った吉田のプレー、リーダーシップを間近で見て感じることは、宮崎にとってさらなるステップアップのための、これ以上ない学びとなるはずだ。