「やるからには中途半端な気持ちでいてはいけない場所」
パリオリンピック世界最終予選(OQT)を約1カ月後に控える、今回の女子日本代表候補の中で最年長は36歳の吉田亜沙美だ。
吉田は2006年にJX-ENEOSサンフラワーズ(現ENEOSサンフラワーズ)に加入し、Wリーグ11連覇の原動力として活躍。また、日本代表でも長く主力として活躍し、2016年のリオ五輪では先発ポイントガードとして、そしてキャプテンとしてベスト8進出を果たした。
2018-19シーズン終了をもって一度は現役引退を表明した吉田だが、半年後に東京オリンピックに向けて現役復帰。2019年11月には2年ぶりとなる代表復帰も果たすと、2020年2月にベルギーで行われた東京オリンピック予選にも出場したが、東京オリンピックの延期に伴い2度目の引退を決意。その後、指導者の道を経て、Wリーグに2度目の復帰をすると、再び代表の話が巡ってきた。
吉田は代表復帰の経緯についてこのように話した。「日本のために、私が力になれることがあれば是非参加したいですというコミュニケーションがありました。自分のポジションの部分も気にされていましたが、やるからには中途半端な気持ちでいてはいけない場所ですし、私が入って伝えられるモノがあればと思います。復帰もチャレンジでしたけど、ありがたいお話だったので、うれしく思っています」
約4年ぶりの代表活動をスタートさせた吉田は「すごくしんどい」とそのキツさを訴えたが、それと同時に「でも、楽しいというのが一番に来る」と、レベルの高い場所で切磋琢磨し合える環境を楽しんでいるようだ。
「何年かぶりに日本代表に戻ってこられて、いろいろなチームの選手とバスケットができるのが本当に楽しいです。恩塚さんが日本代表のヘッドコーチになってから初めてだったので、システムとか叩き込まなきゃいけないことはあるんですけど、新しいことをやるチャレンジは好きなので楽しいです。若いガードが多いですけど、いろんな武器を持っている選手達なのでそこは盗みながら、自分のモノにしていきたいと思います。自分が今まで経験してきたことだったり、チーム作りも含めて伝えられることはどんどん伝えていきたいです」
恩塚HC「シューターに供給するパスの質が素晴らしい」
恩塚亨ヘッドコーチは、吉田が持つ豊富な経験値、そしてパス能力を評価して招集したと言う。「吉田選手に関しては、コンディションの心配もあったんですが、試合を何度か見ている中でシュート力も上がっていますし、やはりシューターに供給するパスの質が素晴らしいので、そこを期待しています」
全盛期は大事な場面で自らシュートを沈め、力強いドライブで切り崩しては味方のシュートをお膳立てするなど、絶対的なエースガードだった。しかし、2度の引退を経た今は「スタートで出るとは思っていない」と、吉田は現在地を冷静に見つめる。それでも、他の選手がしたことのない多くの経験値は必ず、日本の力になると信じている。
「後から出ていって流れを変えるのは、自チームでの役割と一緒で、そこは自分の武器です。1分でも2分でも3分でも、与えられた時間の中でリズムを取り戻せるかですね。オリンピックの経験もしましたし、オリンピックに出るまでに負け続けた悔しさも知っています。ゲームの中でここが大事だよねっていう場面は経験値として分かっているモノがあり、財産になっているので、そこは自信を持っていいのかなと思っています」
パリオリンピックの出場権がかかるOQTは想像を絶するプレッシャーに見舞われる。そして、その重圧は時に日本のパフォーマンスに悪影響を与えることもあるだろう。そんな時、酸いも甘いも知る百戦錬磨の吉田の存在は、必ずやチームにポジティブな影響をもたらすはずだ。