「自分たちのバスケットをすれば勝てるほど、世界は甘くない」
オリンピック世界最終予選(OQT)を約1カ月後に控え、第5次強化合宿がスタートさせたバスケットボール女子日本代表がメディアの取材に対応した。
まず、代表を指揮する恩塚亨は今回の20名の選手選考について『走り切るシューター軍団』をコンセプトにしていると明かした。「それが日本の強みを最大限に発揮して、競争の優位性を発揮できるポイントというふうに考え選手を招集していますし、選手たちにもそのことを伝えています。また、チームプレーにコミットできる選手たちが素早く動けて、シュート力があって、戦い抜ける。これが日本の強みだと思っているので、この強みをいかに出していくかが1つのポイントです」
日本はアジアカップ、アジア競技大会でともに中国に2点差で敗れて2位で大会を終えた。特にアジア競技大会の決勝は本橋菜子と星杏璃を体調不良で欠きながらも、ツインタワーを擁する中国に対し、高速トランジションと長距離砲を武器としたスタイルであと一歩まで迫った。日本のスタイルが間違っていなかったことを証明したが、だからこそ、恩塚ヘッドコーチは「自分たちのバスケットをすれば勝てるほど、世界は甘くない」と言い、強みを最大限に特化した今回のコンセプトに至ったという。そして、多くの時間を費やし、ライバル国の準備を進めてきたことに自信をのぞかせた。
「自分たちのバスケットができなくなる時を洗い出して、そのパターンや傾向、あるいはそこに必要な技術もピックアップして、優先順位をつけてトレーニングするようにしています OQTの対戦国が決まってからこの合宿まで、ピック&ロールだけのシーンとか、ポストアップのシーンなど全部を並べて、対戦相手の全クリップを200時間以上かけてチェックしました。相手の強み、弱みは何かを整理し尽くして、その中で必要なことを落とし込んでいる状況です」
前述の通り、基本的なスタイルは変えずにこれからの戦いに挑むことになるが、それはこれまでの敗因が明確だったからこそ。その敗因となった要因に目を向け、修正していくことでさらに上を目指すと恩塚ヘッドコーチは言う。
「チームで相手にアジャスト、ストップするこは結構質が高くできていました。でも、ショットクロックがなくなった時に能力で来る1対1に対して、動きすぎて守り切れないところがありました。『五輪の書(宮本武蔵の著した兵法書)の後の先を取る』じゃないですけど、相手の動きを感じてその瞬間に自分の先を取りに行くみたいな、そういう守り方も高めていく必要があるので今日導入しました。これから積み重ねてトレーニングしていこうと思っています」
「私たちの1番大きな課題はペイントエリアのフィニッシュの確率だけじゃなく、選択やサポートとかの部分が著しく敗因になっているんじゃないかなと。それらを改善し、強みに特化したメンバーで振り切ろうと思っています」
当然ながら、OQTを勝ち抜かなければパリオリンピックには出場できない。以前は「日本のバスケット界を高めるというような意識もあって、バランスを取る感覚もあった」と恩塚ヘッドコーチは言う。だが今は「勝ち切ることにフォーカスした」と、目の前の1勝に全力を注いでいる。