文=大島和人 写真=B.LEAGUE

逆転を許した後、前日の反省からしっかり我慢した三河

西地区首位のシーホース三河と東地区首位のアルバルク東京の交流戦は、28日の第1戦をA東京が81-69で取っている。第2戦のウイングアリーナ刈谷は、今季最多の3013名が詰めかける盛況となった。

外国籍選手のオン・ザ・コート数は三河が「1-2-1-2」で、A東京が「2-1-1-2」。前半は点差がなかなか開かない、激しいつば競り合いになった。

三河の金丸晃輔は昨日の敗戦からの修正をこう説明する。「昨日はシュートの本数がいつもより少なかった。その辺で消極的になってしまったけれど、今日はゲームの入りからどんどん打って行こうという気持ちでやっていました」

金丸はその言葉通りに、開始直後から積極的に打っていく。第1クォーター残り7分25秒、7分04秒と立て続けにジャンプショットを沈めると、そこから3ポイントシュート2本を落としたものの、3本目と4本目はきっちり成功。金丸の12点、比江島慎の7点などで三河が23得点を奪い、1点のリードで最初の10分を終えた。

A東京も田中大貴、ディアンテ・ギャレットが得点をしっかり挙げていた。田中はターンオーバーやリバウンドからの速攻で持ち味を発揮し、ギャレットも第2クォーターの10分間で3ポイントシュートを2本成功。A東京が43-40と逆転して前半を終える。

第3クォーターに入るとA東京が更にリードを拡げる展開になった。竹内譲次がアグレッシブに仕掛けてポイントを重ね、残り2分53秒には彼の3ポイントシュートで61-52まで点差を広げる。ただ三河はここで食い下がった。比江島は「我慢勝負の時間帯があった。第3クォーターで昨日と同じように離されたけれど、そこで我慢して付いていったのが昨日から修正できたところ」と説明する。

一方でA東京には「影」が差していた。アイザック・バッツとのバトルで身体を張っていたトロイ・ギレンウォーターからピリピリした雰囲気が漂い始めて、タイムアウト時もチームの「輪」に入らない。ベンチの隅でうつむいて、気持ちを必死に静めている様子だった。伊藤拓摩ヘッドコーチは状況をこう説明する。

「見てもらったら分かるように、イライラしていましたね。隠す必要もないし、本人も分かっているし、ウチの選手も分かっている。彼はああいう風に表現してしまうんですけれど、あれは彼の性格であり、でも彼はウチの選手です。みんなと一緒にどう戦っていくかはできている。今日みたいにフラストレーションが溜まりすぎてしまうこともありますけれど、そこも含めてチームとしてどう戦うか。彼も彼で成長しなければいけないし、僕も僕でどういう風にコーチングするのか。戦術だけじゃなくて、ケミストリーの部分も含めてプレーオフに向けて向上させていかないといけない」

我慢比べに耐えられず、ギレンウォーター自ら戦線離脱

三河は59-64と5点ビハインドで迎えた第4クォーターに盛り返す。金丸が3ポイントシュート2本を含む8得点、比江島も5得点を挙げて一気に逆転し、さらにA東京を突き放す。鈴木貴美一ヘッドコーチが「いい感じで点数を取るべき選手が取った」と振り返るように、試合を通してみると金丸が27得点、比江島が21得点とダブルエースがしっかり数字を残した。

金丸はこう振り返る。「ボールを持っていないところで、どう上手くスクリーンを使うか。相手のディフェンスをスクリーンとかでちょっと隙を作る感じに離していくことを、常に頭の中に入れていた。今日はそれが上手く行った」。彼のシュート力や気持ちの強さはもちろんだが、周りとの連携もあったからこそのハイスコアだった。

三河はインサイドもアイザック・バッツが14得点13リバウンドでダブル・ダブルを達成。チームのリバウンド数は「38」でA東京の「29」を上回った。

A東京はギレンウォーターが残り2分40秒に、テクニカルファウルを犯す。三河はこのフリースローを金丸が決め、リードを77-70まで拡げた。ギレンウォーターは退場となったわけではなかったにもかかわらず、一人でロッカーに引き上げてしまう。判定への不満や思い通りにいかないプレーへのストレスがあったのかもしれないが、チームの反撃に水を差す行動だった。

三河はその後のファウルゲームでもしっかりとフリースローを決めて、85-77で逃げ切った。

リーグ戦の対決は2試合で終わりだが、両チームとも覇権争いに絡むB1の強豪。三河とA東京がセミファイナル、ファイナルのような大詰めで『再会』する可能性は高い。ヘッドコーチと選手のコメントからはポストシーズンに向けた意識が、強く反映されていた。

オールジャパンやNBLなどのプレーオフは三河が勝負強さを見せているこの対決だが、リーグ戦に限ると三河には苦手意識があったという。

鈴木ヘッドコーチは「レギュラーシーズンで悔しい負け方をしていた。それをいい意味で修正できて、(昨年以前の)プレーオフも結果が出ているけれど、(今季は)レギュラーシーズンの戦いでいいところ悪いところが出た。プレーオフに向けて非常に良かった」と収穫を口にする。

比江島も「負け癖、苦手意識は本当に持ちたくなかった。本当に2連敗しなくてよかった。こういう戦い方をすれば勝てると分かったし、今日は価値ある一勝」と笑顔を浮かべる。三河にとっては単なる1勝以上の意味を持つ、A東京へのリベンジだった。