世戸陸翔

「ブロックされないように考えた結果があのフローターでした」

ウインターカップ2023は福岡大学付属大濠を63-53で破った、福岡第一の優勝で幕を閉じた。

福岡第一は崎濱秀斗の圧倒的な得点力、サーシェッハら留学生の高さ、そして伝統の『堅守速攻』を武器に頂点まで上り詰めた。そんな中、要所で3ポイントシュートを沈め、オフェンスリバウンドからのセカンドチャンスポイントや味方との合わせから得点を量産するなど、特に大事な場面で顔を出し続けた世戸陸翔は福岡第一の優勝に欠かせない存在感を放った。

留学生に次ぐ高さを誇る193cmの世戸は、もともとその長身を生かしたポストプレーなどで得点を量産するスコアラータイプで、中学生の時は点数を取ることを求められていたという。しかし、福岡第一ではリバウンドや合わせなど、個人技に特化しないプレースタイルへの変更を余儀なくされた。当初はその適応に苦労したという。「チームのスタイルも中学とは全然違いましたし、最初の1年はすごく慣れない状況でした。チームにできることは何かを自分なりに毎日考えて、得点よりもルーズボールなどだと、意識するようになりました」

だが、こうした考える力があったからこそ、世戸は福岡第一の不動の先発となった。特にゾーンディフェンスを攻略する際には、世戸のハイポストからのフローターが効果的だったが、このフローターも自ら考えて身に着けた武器だ。「(チームメートの)ムスタファ(ンバァイ、210cm)にジャンプシュートだと普通にブロックされていたので、ブロックされないように考えた結果があのフローターでした。練習して磨きました」

こうした得点力は崎濱が故障離脱中のチームを救い、日清食品トップリーグではランキング2位となる平均16.7得点を挙げた。世戸も「エースガードがいない中で点数を取れと言われて、得点ランキング2位と結果に繋がりました」と、成長の手応えを感じていた。そして集大成のウインターカップでも崎濱に次いでチーム2番目に多い平均15.5得点を記録し、大会ベストファイブも受賞した。

世戸は試合後の会見で「優勝した実感がまだありません」と語っていた。それは自身が主役の大会で好成績を収めたことがないことに起因する。「中学の時の全国大会は1回戦で負けました。去年はメンバーに入れさせてもらったんですけど、試合にはそんなに絡めなかったです。こんな経験をしたことがなくて、まず、メインコートに来れた時も実感がなかったです。毎年テレビで見てるような景色を自分が見れて、本当にこういう状態になるとは思っていなかったので、チームに感謝しています」

「試合よりも第一の練習の方が2、3倍キツイ」と語るように、福岡第一では濃密な時間を過ごした。そして、この経験を日本大学という次のステージで生かしたいと世戸は言う。「高校で学んだことを強調するところは強調し、大学で生かしていきたいです。オフェンスをもっと意識したいと思っているので、3ポイントだったりドライブだったり、点数を取ることを意識しながら、得点力をもっと上げていきたいです」

再びスコアラーとしての能力を磨き、大学バスケ界でさらに輝きを増す世戸に期待したい。