トロント出身のバレットは地元のラプターズへ移籍
ニックスとラプターズの間で大型トレードが実現した。その中心となるのはOG・アヌノビーとRJ・バレットだ。ラプターズはアヌノビーとプレシャス・アチウワ、マラカイ・フリンを手放す代わりに、バレット、イマニュエル・クイックリー、来年の2巡目指名権を得る。今夏、ラプターズはニックスのアシスタント・ビデオコーディネーターを引き抜き、その人物が転職に際して機密情報を含んだニックスのデータを持ち出したことで両チームは裁判で争っているが、それが戦力補強を妨げることはなかった。
ラプターズにとってアヌノビーのトレードは既定路線だった。昨シーズン限りで指揮官ニック・ナースが去り、フレッド・バンブリートも移籍した。再建に舵を切ったチームはここまで12勝19敗とプレーオフ進出ラインより下。契約最終年となる来シーズンがプレーヤーオプションとなっているアヌノビーを保持していても、夏にはフリーエージェントで出て行かれてしまう。それよりもトレードで何らかの見返りを得るべきだった。
今夏の時点で、そのアヌノビーには複数のチームから1巡目指名権を含むトレードの打診があったと言われる。その一つがニックスだ。良いチームの基盤はできているが、プレーオフで勝ち進むには力が足りない状況から前進するために、2019年の全体3位指名で獲得したバレットを手放してでもアヌノビーを獲得した。
先発スモールフォワードがバレットからアヌノビーになることで、オフェンスのクリエイト能力は落ちるが、ディフェンス力は確実にアップする。特に相手のエースを止めるアヌノビーの能力は『プレーオフ向き』であり、これまでのニックスにはなかったもの。今シーズン終了後に契約最終年を破棄して出て行かれるリスクはあるものの、アヌノビーのエージェントを務めるサム・ローズは、ニックスのレオン・ローズ球団社長の息子であり、他のチームよりもリスクはずっと小さい。パワーフォワードのアチウワはミッチェル・ロビンソン戦線離脱の穴を埋められるし、フリンはクイックリーの役割を引き継ぐことになる。
バレットは再建チームに移籍することになるが、カナダ国籍でトロント出身の彼にとってラプターズは子供の頃から馴染みのある『心のチーム』だ。キャリア5年目のバレットは間違いなく才能はあるが、好不調の波が大きくエースになりきれずにいた。再建中のラプターズとともに成長するのは、彼にとって悪くない道だろう。
同じく移籍するクイックリーは4年目でルーキー契約が終わろうとしている。昨シーズンのシックスマン賞で2位となるなど評価は決して低くないが、ジェイレン・ブランソンが絶対的な存在となるニックスで、サイズのないガードの将来はさして明るくない。新契約を結ぶにあたり、ニックスよりもサラリーキャップに余裕のあるラプターズの方が良い条件を提示できるだろう。23歳のバレット、24歳のクイックリーはラプターズにとっては再建のタイムラインに合う、じっくりと育てられる年齢なのが魅力だ。
ここから2月のトレードデッドラインに向け、また今シーズン終了後を見据えて、両チームの補強はまだまだ続く。バンブリートに続いてアヌノビーを手放した今、今シーズン限りで契約満了を迎えるパスカル・シアカムのトレードはかなり高い確率で起きるだろう。ニックスはもともとアヌノビー獲得に使おうとしていた1巡目指名権を残している。アヌノビー獲得は優勝へ向けてチームをグレードアップさせる意思の表れであり、補強のチャンスがあれば逃しはしないはずだ。
Welcome, OG! pic.twitter.com/AusOlJTyM7
— NEW YORK KNICKS (@nyknicks) December 30, 2023