ジャマール・ケイン

RJ・ハンプトンとニコラ・ヨビッチも活躍

スター選手が揃うチームは若手を育てられない。ウォリアーズはNBA優勝を重ねながらも、その課題を解決できずにいる。有望株だったジェームズ・ワイズマンとジョーダン・プールは放出した。ジョナサン・クミンガはこのところ良い働きを見せているが、ドレイモンド・グリーンの出場停止が終われば、その役割は再び限られたものになる。そんなジレンマを抱え続けるウォリアーズは、自分たちをねじ伏せたヒートの戦いをどんな思いで見ていたのだろうか。

現地12月28日のウォリアーズvsヒートは、ヒートが114-102の快勝を収めた。ジミー・バトラーとカイル・ラウリー、ケイレブ・マーティンをケガで欠いたが、それで巡ってきたチャンスをRJ・ハンプトン、ジャマール・ケイン、ニコラ・ヨビッチの若手トリオが生かした。指揮官エリック・スポールストラは試合後、開口一番に「この3人の働きがなければ勝つことはできなかった。3人がそれぞれ素晴らしいインパクトを残してくれた」と称えた。

22歳のハンプトンはこの試合がシーズン初先発で、ほぼすべてのスタッツでシーズンハイを記録した。ハンプトンとともに2ウェイ契約のケインは24歳ながらキャリア2年目、ディフェンスとリバウンドの泥臭い仕事を懸命にこなし、シュートも当たって18得点を挙げた。2年目のヨビッチは昨年の1巡目指名選手としては伸び悩んでいるが、スポールストラは「一歩ずつ成長しているのは分かっているから急がなくていい」と彼を安心させている。その彼も20分で11得点を挙げた。

ケインは2022年のNBAドラフトにエントリーするも指名を得られず、その年のサマーキャンプ契約からヒートに在籍しているが、昨シーズンは18試合に出場しただけでGリーグが主戦場だった。今シーズンも2ウェイ契約で、その立場は保証されていない。それでもウォリアーズを相手にキャリア最高の試合をやってのけ、「素晴らしい気分だ。チームの勝利に必要なことは何でもするつもりだった」と語った。

1週間前の敵地でのマジック戦、彼ら3人すべてがオーランドに遠征したものの、時を同じくして開催されたGリーグの試合に回された。スポールストラも視察に訪れたラプターズ905戦でチームは大敗し、彼らはロクなプレーができなかった。「実際、3人揃ってひどかった」とスポールストラは言う。

「だが、3人揃って出来の悪さを受け入れて改善に努めた。自分たちのプレーを恥じ、怒り、その感情を自分のプレーの改善へと向けた。選手が成長するのに必要なのはシューティングだけじゃない。自分の役割を理解して受け入れ、勝利にどう影響を与えるかを学ぶことだ。良いプレーができなかった時に、どうやって乗り越えるかを考えるのが一番大事なんだ」

特にレギュラーシーズン前半のヒートでは、主力がケガをしている間に、2ウェイ契約も含めた若手が試合で経験を積み、気づけばローテーションにがっちり食い込むことを毎年繰り返している。ウォリアーズ戦の日には、Gリーグのサンタクルス・ウォリアーズの試合も組まれていた。主力にケガ人が出ていなければ、3人はそちらに回されていたかもしれない。「それはそれで、また成長の糧になるものさ」とスポールストラは笑みを浮かべた。

「チャンスがいつ来るかは分からない。これはUD(ユドニス・ハズレム)がいつも言っていることだ。若手は常に準備を怠らないようにしなければならない。いつ来るか分からないチャンスで自分自身の才能を証明することが、NBAで地位を確立するということなんだ」