「オファーが来るのは自分がやってきたことへの称賛」
ラウリ・マルカネンは昨年夏にドノバン・ミッチェルのトレードの一部としてキャバリアーズからジャズに移籍した。ミッチェルに加えてルディ・ゴベアもトレードに出したジャズは再建へと舵を切ったところで、スター選手が腰を落ち着けるチームではない。ただ、その時点でのマルカネンはプレーヤーとしての価値をさして認められてはいなかった。ブルズで伸び悩み、キャブズに移って上向いたものの、若い才能を多数抱えるキャブズが「この選手なら放出してもいい」という選手だった。
しかし、選手の価値はアップダウンが激しいものだ。ジャズに来てエースの役割を託されたマルカネンは突如として飛躍する。これまで2年目の18.7が最高だった平均得点は25.6まで延び、ジャズの再建1年目を力強く引っ張る存在となった。今シーズンもふくらはぎのケガによる戦線離脱はあったものの、その期間を除けばチームの期待に応えるパフォーマンスを見せている。
ジャズの再建はまだ始まったばかりで、26歳と若いマルカネンにトレードの噂が出るのは当然のこと。キングスやサンダーといった、飛躍の時期を迎えておりマルカネンのサラリーを抱える余裕のあるチームは、その獲得に本腰を入れてもおかしくはない。ただ、ジャズのバスケットボール部門CEOとして編成を司るダニー・エインジは『超やり手』であり、ミッチェルとゴベアを放出した時のような実のある見返りを求めるだろう。
そんな状況にあるマルカネンだが、彼自身はそれがステップアップだとしても今はまだ移籍を望んでいない。『The Athletic』の取材に応じた彼は「僕はドラフト当日も含めて3度トレードされて、NBAのビジネスについては分かっているつもりだ。ただ毎日バスケに打ち込んで、自分の能力を最大限に発揮してプレーするのが大事なのも分かっている」と、噂に右往左往しない姿勢を明確にして、こう続けた。
「僕はジャズにいるのが好きだ。獲得のオファーが来るとすれば、それは自分がこれまでやってきたことへの称賛だと思う。いずれそういう日が来るかもしれないが、僕はジャズが今築いているものを信じている。そのことは強調したい」
マルカネンとしては、伸び悩んだブルズ時代もキャブズ時代も今も、彼自身は変わっていないと考えているのだろう。置かれた環境が自分に合っていたから良い結果が出ている。だとすれば、自分にハマっているのが明らかなジャズでもう少しプレーを続けたいと思うのは当然のことだ。
マルカネンの契約は2025年まであるが、今シーズンの年俸は1700万ドル(約25億円)と安く、最終年は600万ドル(約9億円)しか保証されていない。契約延長も視野に入れた駆け引きが、これから続くはずだ。