佐々HC「『すげぇなブレックス』と思わせないといけない。それを今日は体現してくれました」
12月9日、宇都宮ブレックスがホームで川崎ブレイブサンダースと対戦し、オーバータイムの末に86-83で競り勝った。第3クォーターまで劣勢の宇都宮だったが、第4クォーターとオーバータイムの計15分間でわずか16失点と、勝負どころで強度の高い本来のディフェンスを取り戻す見事な逆転勝利を収めた。
前半は、両チームともにボールがよく動いて内、外バランス良く得点を挙げていく。また、ともにハッスルバックなどハードワークを続けてイージーシュートを許さないことで互角のスタートとなるが、第2クォーター終盤に川崎はゾーンディフェンスからトランジションに繋いで連続得点を挙げ、43-39と先行する。
第3クォーターも川崎のペースが続き、藤井祐眞の連続得点などでリードを12点にまで広げる。だが、ここから川崎がトランジションでのターンオーバーでリズムを崩すと、宇都宮はその隙を突いて6点差にまで縮める。そして、第4クォーターに入っても粘り強く追いかける宇都宮は、残り3分にD.J・ニュービルがファウルを受けながら3ポイントシュートを沈めるビッグプレーを決め、遂に逆転する。だが、川崎も意地を見せて残り2分半に追いつくと、ここから両チームともに決定力を欠いて追加点を挙げられず、試合はオーバータイムに突入した。
オーバータイムでも宇都宮は引き続き守備の強度を維持し、藤井とニック・ファジーカスのツーメンゲームを主体とした川崎のオフェンスをほぼ完璧に封じ込める。そしてともにチームファウルが5つを超えている中、宇都宮は積極的なアタックを続けることで川崎のファウルを誘発し、フリースローで得点を重ねることで大きな勝利を挙げた。
宇都宮はバイウィーク明けから左太ももの肉離れで戦線離脱しているギャビン・エドワーズに加え、先発ガードの鵤誠司もコンディション不良で欠場。2人の主力を欠く厳しい中、後半早々に2桁のリードを許す嫌な流れでそのまま敗れると、63-67で競り負けた秋田ノーザンハピネッツ戦に続く連敗となり、スタートダッシュ成功の勢いが失速するところだった。この重要な踏ん張りところで、佐々宜央ヘッドコーチが「『すげぇなブレックス』と思わせないといけない。それを今日は体現してくれました」と語るチーム力の高さを見せた。
「ファウルをせずに賢く、我慢して最後まで戦い抜けた印象です」
宇都宮の渡邉裕規は3ポイントシュート5本中3本成功を含む11得点2アシストを記録。劣勢の中で3ポイントシュートを決めてチームが崩れるのを防ぐと、第4クォーター終盤からオーバータイムにかけては粘り強いディフェンスを見せ、数字以上のインパクトを与えた。
シーズン最多26分11秒のプレータイム、2度目の2桁得点と鵤欠場の穴を埋めるステップアップを見せた渡邉は、「この前の秋田戦ですごく残念な試合をしてしまいました。いろいろな要素がありますが、そこから立ち上がり、自信を持ってプレーすることができて良かったです」と語り、この勝利が持つ意味の大きさを強調する。
「メンバーが変わった中、川崎さんのような強豪相手にホームで勝ち切れるのは昨シーズンには見られなかったことだと思います。新しいメンバー、若いメンバー、元からいたメンバーと全員がプライドを見せた試合ができたことは、日本一を決める状況などシーズン終盤の大事な場面で必ず精神的な支えとなる経験です。大きな勝利だと思います」
また、勝負どころでファウルで崩れた川崎に対し、ファウルをせずに我慢し切れた宇都宮と、勝敗を分けたディフェンスについてこう振り返る。「最後の場面は、チームファウルがたまっていてファウルをすればフリースローとなるので、強度を上げるのはすごく難しかったです。そのギリギリの状況で、相手がビッグラインナップで来た中、リバウンドを取られたり、ファストブレイクを出されたこともありましたが、食らいついていけました。ファウルをせずに賢く、我慢して最後まで戦い抜けた印象です」
オーバータイムで宇都宮はエースの比江島慎もファウルアウトになった。それでも、密着マークで川崎のエースである藤井を抑え込んだ遠藤祐亮、エドワーズの穴を埋める竹内公輔に渡邉と、過去2度のBリーグ制覇を経験している百戦錬磨のベテランたちが勝利をもたらした。
新戦力ニュービルの大暴れに加え、在籍年数の長いベテランたちも存在感をしっかり出し、王座奪還に向けて宇都宮らしいケミストリーと勝負強さを取り戻す勝利だった。そして、渡邉の3ポイントシュート爆発による『ナベタイム』の影響力が健在であることを強く印象づける一戦となった。