橘裕

15年連続40度目のウインターカップ出場となる小林は、オールコートディフェンスを武器に身長差をはねのける戦い方が魅力だ。前回大会は2回戦で京都精華学園と対戦し、激しいディフェンスで女王を苦しめた。今大会も京都精華学園と同じブロックとなり、勝ち上がれば準々決勝で激突する。橘裕(ゆたか)コーチはリベンジに燃えている。後編では延岡学園との戦いを通じて気付かされた「自分たちに矢印を向けたチームづくり」への思い、日本一への意気込みを聞いた。

「ライバルの映像を見なくなりました」

——就任から現在までの宮崎県内での戦いぶりをお聞かせください。

去年のインターハイ予選で、3点差で延岡学園に負けました。その時に「自分のせいで負けた」と猛省しました。私はスカウティングなど研究が好きで、留学生のターンする方向や、相手チームがバスケットしてくるタイミングを把握しておくのが好きなんです。その情報を生徒に話しすぎました。それは相手に合わせたチームづくりで、一番大事なのは相手への対応ではなく、自分たちがどうありたいかだと思いました。得意だったスカウティングを過信してすぎて、結局ロースコアゲームになってしまいました。小林は努力型が多く、得点も取れる選手も多いですが54-57で負けました。自分が間違っていました。去年の夏以降は1秒たりとも延岡学園の映像を見ていません。相手は関係ない。負けた後にインターハイの時期に合わせて、武庫川女子大や天理大、立命館大、大阪体育大とゲームをして、闘うマインドをもう1回自分たちに矢印を向けました。トライする事項も細かく設定しました。今年の3年生は昨年の先輩と一緒に闘うマインドを作り上げました。今年継続して取り組むことで伝統に変わっていきます。昨年の学びや今年に懸ける想いを踏まえて、必ず闘うマインドを小林らしく表現すると決めてウインターカップ予選に臨みました。

——今年のウインターカップ予選の延岡学園との大一番もスカウティング無しで臨まれたしたか。

スカウティングはほぼしていないと思います。ただ、相手のガードはドリブルが上手だとは知っていたので、そういったチームと対戦した時に、必要になるスキルやディフェンスのシステムは作りました。ここはゲームプランで設定していたんですけど、うまくはいきませんでした。

——大会で対戦するチームを想定したダミーチームを作る学校もあると思います。

そうですね。相手に対してノープランはよくないので、生徒と話をしました。相手を理解した上で対応するのではなく、相手に対して自分たちらしく表現できるプレーが何なのかを追求するという感じです。

——チームの一番の強みは。

オールコートのディフェンスだと思っています。個人の力がチームの力に変わっていくと思っているのでマンツーマンにはこだわっています。これからの1カ月間はアジリティのトレーニングを多めにしています。そこを徹底して追い込んでいきます。

小林

「下之薗空心主将から教えてもらうことが多い」

——小林のキーマン、そして期待しているポイントを教えてください。

1人は昨年から出ている平野和々美(ななみ・3年)です。昨年、京都精華に63-85で敗れた2回戦では18分33秒の出場で25得点。チームハイのスコアを取りました。でも、平野にはあと1年あるので、先輩たちを勝たせることができなかったことを踏まえて、あえてまだまだということを、試合後のインタビューで伝えさせてもらいました。その1年の集大成、エースとしてチームを勝たせるところを背負っているので、やってくれると思っています。もう1人はキャプテンの下之薗空心(こう・3年)です。2年前のウインターカップ前に前十字靭帯を切って、1年経ってウインターカップを迎えて復帰した2週間で再断裂して、2年間プレーできていませんでした。ポイントガードでプレーもさることながら人間性、存在感が圧倒的にあります。戻ってきてチームは相当レベルアップすると思っています。

——下之薗選手のようにケガから復帰して頑張っている姿を見ると希望と勇気をもらえます。

下之薗に関しては、年齢は関係ないという話をよくします。年齢なんて何年生きたかだけで、どう生きてきたかは教えてくれません。年上だからすごいとか、年下だから全然だとかはありません。下之薗から私自身が教えてもらうことが多いです。それぐらいチームに尽くして、説得力を持って先頭に立って示すことができる、率先垂範タイプです。勝負どころのゲー ム展開でコートに立ちます。

——初戦の相手は県立広島皆実に決まりました。

強い相手だなというふうに思いました。サイズ感が大きいチームというイメージもあります。小林は中学生かというぐらい小さいので、高さのビハインドを平面で絶対に上回るという覚悟を持つと再決断しました。

——今大会は勝ち上がれば準々決勝で京都精華学園と対戦するブロックとなりました。昨年の京都精華学園戦のディフェンスは素晴らしかったです。

昨年の京都精華戦はやってきたことが間違いではなかったと生徒から教えてもらえました。オールコートのディフェンスで計23ターンオーバーを奪えて、本当によく守ってくれました。それを得点に繋げられなかったのと、アウトサイドシュートが設定した目標に届かず敗れてしまいました。組み合わせが決まり、同じ山に入りました。勝ち上がって、もう一度対戦してリベンジできればと思っています。

——最後に、全国の皆さんへこういったところを応援していただきたい、こういうふうなところに注目してもらいたいなどのメッセージをお願いします。

小林のチームの在り方として、コートに立っている5人にスポットライトが当たるチームではなく、そのプレーに合わせたベンチの表現があります。そこからコート上の表現に繋がっていきます。ベンチに入れないメンバーが7人いるので、全体にスポットライトが当たるチーム作りを目指して体育館で練習してきました。コート内だけではなく、ベンチから応援席まで小林の表現を徹底してやっていきたいなと思っています。

テーマに掲げている「日本一速いバスケット」をしたいですね。ディフェンスでもオフェンスでも速さに関しては生徒に自信満々でやってもらいたいです。