クリスチャン・ウッド

レイカーズ入りの条件は『脇役』を受け入れること

クリスチャン・ウッドは2015年のNBAドラフトでどのチームからも指名されず、セブンティシクサーズと契約するも解雇された。ピストンズで頭角を現し、ロケッツと契約を結ぶまではプロ生活を続けられるかどうかも分からない不安定な立場にあった。

ブレイクしたことで立場は多少良くなったが、NBAで確固とした地位を得るのは簡単ではない。ジェームズ・ハーデンの抜けたロケッツは勝てるチームではなく、若手ばかりのチームを多少なりとも経験のある自分が引っ張ろうとするも、その努力は空回りするばかり。昨シーズンに所属したマーベリックスでは、大きな期待とともに加入したが、「チームのために自己犠牲のできない選手」というレッテルを貼られて出場機会を失った。

そのウッドは今シーズン、レイカーズに加わった。そのポテンシャルを認められたとも言えるし、サラリーキャップに余裕のない状況でできるせめてもの補強だったとも言える。

現地11月21日にレイカーズはマブスと対戦した。ウッドにとっては、自分に不本意な評価を下したチームとの対決に燃えていたのは間違いない。試合を控えて彼は「前所属チームとの対戦なのは分かっているけど、ただ落ち着いて粘り強く、自分のプレーに徹するつもりだ」と語った。ただ、物事は思い通りに運ばない。センターのポジションでアンソニー・デイビスが36分プレーしたこの試合、ウッドの出番は15分、得点わずか1に終わった。

ダービン・ハムは、かつてバックスのアシスタントコーチとしてブレイク以前のウッドと接している。ハムはレイカーズの指揮官としてウッドにチャンスを与えたが、その条件は『脇役』を受け入れることだった。

それでもレイカーズとの契約は、ウッドにとって願ってもないチャンスだ。これまでの彼は、いつ来るか分からないチャンスを待ち、そこで目立つスタッツを残すことで次の出場機会を得て、それを繰り返すことでNBAでのキャリアを繋いできた。だがハムはロールプレーヤーとして生きるべきだと説き、ウッドはそれを受け入れた。

ウッドは言う。「ここ4年か5年はずっとたくさんのシュートを打つのが僕の役割だった。でも今は違う。チームがリバウンドでの貢献を求めるならそうする。チームが僕のためのプレーをやってくれる日もあれば、そうでない日もある。いずれにしても僕は準備するだけさ」

「今の僕にとっては、5得点5リバウンドで得失点差が+15だったら、勝利に貢献したと言える。20得点10リバウンドみたいなスタッツを出すことはもうないんだ。その機会があれば可能かもしれないけど、今はチームに貢献できる小さな役割を果たしたい」

その姿勢がチームに歓迎されることは、ウッドも以前から理解している。ただ、分かっているのと実践できるのは大違いで、決して小さくない痛みを抱えながら彼は変わろうとしている。マブス戦での彼は、できることならルカ・ドンチッチ相手に大暴れして、豪快なダンクを決めてジェイソン・キッドを見返したかったはずだ。だが、そのエゴはもう捨てた。彼が悔しがっているのは、思う存分プレーできなかったことではなく、15分のプレーで得失点差-15とチームに貢献できなかったことだ。

ただ、ウッドは正しい方向に進んでいる。変わるのは簡単ではないが、必死になって変わろうとしている。レイカーズにはレブロン・ジェームズとアンソニー・デイビスという看板選手がいるが、この2人だけでは勝てない。長いシーズンを通して個々がステップアップし、チームとしての結束を強めることを、指揮官ハムは選手たちに求めている。

マブスに敗れた試合後、ハムは至って落ち着いて「最後のシュートが入ったか入らなかったか、それだけの差だよ」と語り、ポジティブなメッセージを選手たちに送った。それは旧知の選手であるウッドを多分に意識したものだろう。「思うような活躍ができずに苦しんでいる選手がいても、全員が前向きでいてほしい。自信を持っていれば大丈夫だ」