女子日本代表の新たなヘッドコーチは日本のバスケを知り尽くしたトム・ホーバス「決勝でUSAを倒して金メダルを」

2017/01/23
Bリーグ&国内
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文=鈴木健一郎 写真=野口岳彦

3月末日の任期満了をもって内海知秀ヘッドコーチは退任

1月23日、日本バスケットボール協会が会見を開き、女子日本代表の新たなヘッドコーチ人事を発表した。長らく女子日本代表を率い、2013年と2015年のアジア選手権を連覇、そして昨年のリオ五輪でベスト8進出を果たした内海知秀ヘッドコーチは、3月末の契約満了をもって退任。さらに、これまでアシスタントコーチを務めたトム・ホーバスがヘッドコーチに昇格する。

内海ヘッドコーチは2003年から04年、06年から08年、そして2012年から現在までと長く女子日本代表を率いてきた。「ロンドン五輪の世界最終予選を前に、私としては3度目となる代表ヘッドコーチに就任しました。力及ばずロンドン五輪には出場できませんでしたが、そこからの4年間は、選手、スタッフに支えられながら、精一杯戦ってきました」と在任期間を振り返る。

「おかげさまでアジア選手権連覇、リオ五輪への出場を果たし、相応の達成感がある一方で、チャンスのあったメダル獲得を成し得なかった悔しさと責任を感じるところです。今後は女子日本代表チームの成長と活躍を楽しみに、応援していきたい」

女子日本代表は『継承』がテーマとなる。全面的な刷新を推し進める男子とは違い、内海ヘッドコーチがこの4年間で育て、リオ五輪で大健闘を見せたチームを土台に、新たなプラスを積み上げていく。そのための人選が、日本のバスケットボール界に長く身を置き、アシスタントコーチとして現在の代表を熟知しているホーバスだった。

2016年のリオに向けては『メダルへの挑戦』がテーマだったが、2020年の東京オリンピックでは『メダルの獲得』となる。メダル獲得が義務づけられる状況だが、世界のベスト8にようやく食い込んだチームがベスト3に入るには、この3年間で大幅なステップアップが求められる。ホーバスは大きな責任とともにヘッドコーチの職を引き受けた。

JBA技術委員会の東野智弥委員長は『継承』を強調しつつも、ここから先の道の険しさをこう説明する。「女子の日本代表はリオで素晴らしい活躍を見せ、強化は成功しています。ですがこれからはマークされます。例えば中国は機動力のある戦いをやり始めた。これは日本対策です。簡単にメダル獲得とは言うけど、そのハードルはさらに上がりました。今回はそのための決断です」

「夢は五輪の決勝でアメリカと対戦して金メダルを取ること」

ホーバスは日本で豊富な指導実績があり、コーチとしての引き出しも多く、選手からの信頼も非常に厚い。きめ細やかな指導と情熱、素晴らしいリーダーシップを持っている。JX-ENEOSサンフラワーズのヘッドコーチになって1年目だが、今シーズン終了をもって代表ヘッドコーチ専任となることが決定している。

新ヘッドコーチは「リオのメンバーをベースに、若い選手を見ていきたい」と語り、宮澤夕貴と馬瓜エブリンの名を挙げた。自身が率いるJX-ENEOSに所属する宮澤について「渡嘉敷が4番(パワーフォワード)にいる限りはプレータイムがない。そして今は3番(スモールフォワード)で成長している。エブリンも4番だけど3ポイントシュートも打てるので今年から3番をやっている。こういった選手がこれからステップアップしてほしい」

リオのチームから新たにプラスしていく部分の例として「フィジカル」を挙げた。「アメリカは若い選手でもコンタクトは当たり前。日本では逃げるプレーが多いんです。アメリカの選手はボールを持ったらぶつかってきますよ。リバウンド、ボックスアウトにしても、しつこく戦わなければ負けてしまう。小さい選手でもフィジカルで戦ってそんなに負けるわけじゃないと思います」

1967年生まれのトム・ホーバスは現在49歳。現役選手としてはアトランタ・ホークスでわずかながらNBAを経験している。それと前後して日本でプレーした。1990年に来日し、日本人女性と結婚。子供も日本で育てている。今日の会見は一部英語で行ったが、日本語でのコミュニケーションにほとんど問題はない。

「常に夢は大きく、と私は思っています」とホーバスは言う。「中学生からNBAでプレーする夢を持っていましたが、それを実現しました。夢を大きく持たなければ実現させることはできません。代表のコーチとしても大きな夢を持っています。チームの目標はメダルを獲得すること。簡単なことではないのですが、リオの経験は我々を大きく前進させてくれました。私個人としての夢は、東京オリンピックの決勝でアメリカと対戦して金メダルを取ることです」

リオ五輪のことを思い返すと、真夏の早朝の澄んだ空気とともに、内海ヘッドコーチが率いるAKATSUKI FIVEがリオで見せた『ドキドキ』や『ワクワク』がよみがえってくる。ホーバス率いる新たな女子日本代表には、それを大きく上回るインパクト、見ていて楽しいバスケットボールに期待したい。