ジャック・クーリー

桶谷HC「今いるメンバーで、どうやって勝つのかを常にみんなで考えプレーできています」

琉球ゴールデンキングスが11月12日に島根スサノオマジックと対戦した。80-77と競り勝った前日に続いて最後までもつれる激闘となったが、前日と同じく岸本隆一が決勝弾を沈めて91-84で勝利。西地区の同地区ライバルを相手に、価値ある同一カード連勝を遂げた。

琉球の44-43と互角の展開で前半を終えたが、後半に入ると琉球は前半に沈黙していた今村佳太の爆発もあり、第3クォーター途中でリードを2桁に広げる。だが、第4クォーターに入ると、ペリン・ビュフォード、安藤誓哉を軸とする島根の反撃をくらい残り3分半で1点差に詰め寄られる。

だが、琉球はこの勝負どころで守備のギアを上げて島根の勢いを止める。そして3点リードの残り1分弱、今村がフリースローを獲得。1本目を決めた後、2本目を外してしまうが、ジャック・クーリーがリバウンドをもぎ取ると、岸本が7点差とするダメ押しの3ポイントシュートを成功した。こうして中心選手がそれぞれの役割を遂行することで、激闘に終止符を打った。

15日にEASL(東アジアスーパーリーグ)の試合が残っているが、これで琉球は11勝3敗でブレイクを迎える。ゴール下の要であるクーリーがインジュアリーリスト入りして開幕を迎え、クーリーが復帰すると入れ替わりで新戦力のヴィック・ローが戦線離脱。クーリー、ロー、アレン・ダーラムと本来の外国籍トリオで一度も戦うことができなかった。また、EASLに参戦することで水曜、土日と連戦が続く過密日程だったことを考えると、上々の序盤戦だったと言えるだろう。

週3日の試合が続くことで、当然のようにコンディションは万全とは程遠く、シーズンが開幕してからは他のチーム以上に満足な練習ができていない。そんな中においても連敗はなく、今回の島根との2連戦など接戦をモノにできている要因を、桶谷大ヘッドコーチはこのように見ている。

「今いるメンバーで、どうやって勝つのか常にみんなで考えプレーできています。試合中にどこでアドバンテージがあるのか、どこで不利になるのか、特にチームとしてどこのディフェンスを頑張らないといけないか、そういうところで共通認識を持って戦えています」

琉球の大黒柱であるクーリーは、この試合で16得点、8つのオフェンスリバウンドを含む19リバウンドの大暴れで勝利に大きく貢献。「チームとして、良いプレーができた試合でした。多くの逆境をみんなで一緒に乗り越え、2つの大きな勝利を挙げることができました」と、チームでつかんだ勝利だと強調する。

アレックス・カーク

「カークはスマートで、フィジカルにプレーしてくれる。彼の貢献に本当に感謝しています」

クーリーはこの試合に限らず、10月末の復帰直後からゴール下で圧倒的な存在感を発揮しているように見える。だが、本人は「とてもタフでした。スタッツの面では良い数字を残していても、昨シーズンと同じようにチームを助けられているとは思っていないです」と厳しい自己評価だ。そのため、このブレイク中になんとか状態を上げていきたいと意気込む。

「徐々に時間をかけて本来の調子を取り戻し、昨シーズンのようなプレーをしたいです。ブレイク中は、練習を重ねてコンディションを上げていきたい。それが調子を上げるための良い助けになると思います」

そして自身の離脱を含め、ベストメンバーでない中でも勝ち星を増やせた要因として、アレックス・カークの存在を真っ先に挙げた。昨シーズンまで6年間に渡ってアルバルク東京で活躍したカークは、攻守に渡ってチームファーストの献身的なプレーを着実に遂行。開幕直前の合流ながら、琉球のスタイルにうまく適応し、縁の下の力持ちとして支えた。

クーリーは語る。「ケガ人が出てしまうのは仕方ないですが、そこで本当に幸運なことにアレックス・カークを獲得できました。彼はとても優れた選手です。何度も言いますが、故障者の代役で彼のような実力のある選手が入ってくれたのは、本当に幸運なことでした。彼はスマートで、フィジカルにプレーしてくれる。彼の貢献に本当に感謝しています」

カークについては、桶谷ヘッドコーチも「フロントがアレックス・カークを獲ってくれたのがファインプレーです。(クーリーの離脱が明らかになった後で)一番良い選択肢を見つけてきてくれました」と語り、スタートダッシュの立役者に挙げている。

ブレイク明け、12月2日のシーホース三河戦ではクーリー、ダーラム、ローと本来の外国籍トリオの揃い踏みが期待される。それぞれが違ったタイプで、唯一無二の個性を持つ3人がどんなケミストリーを生み出すか。それは優勝争いに大きな影響を与える注目ポイントだが、クーリーは冷静な姿勢を崩さない。

「ヴィックは復帰に向けてトレーニングをしていて、すぐに僕、ダーラムと(シーズン当初の予定である)3人で練習を行えるようになると思います。連携を深めるにはある程度の時間が必要ですが、運良くブレイクに入ります。チームで練習して、お互いにどう動くべきか理解を深められる時間はあります」

本日、琉球は貴重な日本人ビッグマンである渡邊飛勇のインジュアリーリスト抹消を発表した。渡邊のコンディションが戻り、今夏の日本代表で見せていたプレーを披露できれば、ローを3番起用し、ダーラムが4番、渡邊が5番など選手起用の幅も広がる。カークというこれ以上ない補強で危機を乗り越えた後、首脳陣が開幕前に描いたメンバーによって、ブレイク後はどんなバスケットボールを展開するか、期待は高まるばかりだ。