[CLOSE UP]デクスター・ピットマン(富山グラウジーズ)大幅減量後もまだまだ『ビッグ』、黒子に徹して周囲を生かす

2017/01/23
Bリーグ&国内
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文=大島和人 写真=B.LEAGUE、Getty Images

アメリカンジョークに笑っていたら通訳が「これは本当です」

富山グラウジーズにとって、間違いなく『ビッグ』な補強だった。デクスター・ピットマンと富山の契約が発表されたのは昨年の12月16日。彼は現在B1に10名いる「元NBA」のうちの一人だ。

発表されている身長と体重は211cm128kg。B1でも最大級のサイズを誇るセンターだ。ただ見た目の威圧感とは対照的に、明朗でフレンドリーなナイスガイでもある。「何を食べてどんなトレーニングをすればそんな身体になるのか?」という記者の素朴な質問に対して、彼はこう切り返してきた。「自分はテキサスの出身だけど、すべてが大きい土地だからね。実はテキサスだと小柄な方なんだ」

アメリカン・ジョーク! そして彼はこう続けた。「以前は455ポンドあって、今は277ポンド(125.6kg)に絞った」。ジョークの続きだと思って笑っていたら、通訳に釘を刺された。「これは本当です」

ウェブ上で英語の記事を検索すると、彼のダイエットに関する記事がいくつもヒットした。455ポンドを日本の単位に直すと206.4kg。大相撲初場所で優勝を決めた稀勢の里関より、30kg以上重い体重ということになる。そして過去に80kg以上の減量を成し遂げたということだ。ウエイトコントロールの悩みは皆さんもお持ちかもしれないが、ピットマンはスケールが違う。

「鶏肉、ブロッコリーなどを食べる。自炊をしたり、シェフやトレーナーに頼ってやらないと体重は増えてしまう」とピットマンは言う。

来日から1カ月。彼は体重の管理だけでなく、ゲーム体力の回復に取り組んでいた。リーグ戦で低迷した富山はオールジャパンの出場権を得られなかったため、昨年末から約3週間のインターバル期間があった。彼は帰国せず富山に残って「ウエイトルームに毎日行っていたし、練習の後に一人で走ることもしていた」という。2月中にはアメリカからパーソナルトレーナーを呼び、さらなるコンディション強化を図る。

激しい動きを要求されるバスケというスポーツにおいては、どんなに体格が良くても動けなければ宝の持ち腐れ。ただ、ピットマンは総合的な能力でも間違いなくBリーグを引っ張れるレベル。この週末に対戦した琉球ゴールデンキングスの伊佐勉ヘッドコーチも「幅があって、ちょっとレベルの違う選手が日本も来たなという印象です」と口にする。

130kg近い体重を考えればかなり機敏で、攻守の仕事量も備わっている。左右両手で柔らかいフックショットを打つスキルもある。22日の琉球戦は19分26秒のプレータイムで、チーム最多の19得点を挙げた。

個人プレーではなく周囲を生かすことでサイズを活用

一方でピットマンは自身を黒子役と考えている。彼は自らのプレースタイルをこう説明する。「ピック&ロールやハイ・ローのプレーが自分の持ち味。自分の体格を生かしたスクリーンで、相手の対応が遅れてくると思う。そういったところでチームの得点を増やしていきたい」

ピットマンは肩幅も特大サイズで、身体の「面」が圧倒的に大きい。22日の試合も面の大きさを生かしたスクリーンが猛烈に効いていて、水戸健史のドライブが威力を発揮したのもその効果だろう。

ボブ・ナッシュヘッドコーチが「ポストでピットマンを活用するということは試合前から意識していた」と語るゲームプランが、富山にとっては有効だった。加えて彼は相手を大きく巻いてしまうようなスピンターンから、あっさりシュートに持ち込む凄味も見せていた。

コンディションは調整途上だが、チームには徐々にフィットしつつある。「ピットマン効果」はすでに出ていて、彼の加入前に3勝20敗と沈んでいたチームが、加入後の9試合は4勝5敗と持ち直している。琉球戦の連勝で、チームはB1最下位の不名誉も払拭した。

彼のプレータイムを20分前後に抑えてしまうことは勿体ないようにも思えるが、ナッシュヘッドコーチは彼の「使い方」をこう説明する。

「彼はインサイドでずっとハードワークをしているし、小さい選手のように40分プレーしてフロアを走り回るタイプではない。自分たちには3人の強力な外国籍選手がいる。その一人ひとりが持ち味を生かしながら、タイムシェアをして今日みたいにできればしっかり勝つことができる。これからもこういった起用方法になると思う」

ピットマンは「瞬発力型」のアスリート。短時間の起用だからこそ、この爆発力が引き出される部分もあるのだろう。

28歳の彼は2010年にテキサス大を卒業し、ドラフト2巡目(全体32位)でNBAのヒートから指名を受けた。ヒートには延べ3シーズン在籍し、かのレブロン・ジェームスとチームメートだった。「試合への精神的な準備、スペーシング……。学んだことは沢山ある。レブロンはすごく賢いし、バスケットをよく知っている。彼とのプレーは良い経験になった」とピットマンは言う。

体格、プレーのすごさは一目で伝わるし、良い意味でキャラクターも立っている。富山を浮上させるだけでなく、Bリーグの人気者になる可能性を秘めたピットマンに注目だ。