ニック・ファジーカス

琉球、島根を相手に3勝の価値「両方ともアウェーだったことに注目してほしい」

11月8日、川崎ブレイブサンダースはホームで信州ブレイブウォリアーズと対戦。プレータイムをシェアし、40分を通して激しいプレッシャーをかけ続けるディフェンスで主導権を握り75-59で勝利した。

現在、信州は故障者が多く、外国籍でプレーできるのも2人のみ。帰化枠のニック・ファジーカスと外国籍3名が出場する川崎は、サイズで大きなアドバンテージを得た。このマイナス面を補おうとゴール下で人数をかけて守ろうとした信州だが、川崎はその隙を突いたファジーカス、ヒースらが効果的に3ポイントシュートを沈めて流れをつかむ。

第1クォーターで24-11とビッグクォーターを作った川崎は、そのまま2桁のリードを維持して前半を終える。後半に入ると、川崎は連携がうまく取れていないことによる凡ミスが増え、信州に連続得点を許すと第3クォーター終盤には2点差にまで肉薄される。だが、川崎はこの危機にロスコ・アレンが3ポイントシュート成功と、再びビッグマンの長距離砲で試合の流れを引き寄せる。第4クォーターは集中力が切れた信州に対し、アレン、トーマス・ウィンブッシュの力強いアタックで着実に得点を重ねて逃げ切った。

川崎の大黒柱ニック・ファジーカスは次のように信州を称え、しっかりと勝ち切れたことに手応えを得ている。「マイク(勝久マイケルヘッドコーチ)はタフで、粘り強いチームを作り上げています。信州はオフに多くの主力が去り、今も複数の故障者がいてチームを立て直しているところだと思います。その中でも、彼は粘りのあるチームを作っています。信州との対戦で簡単な試合はないです」

今日の勝利で、川崎は10勝2敗と順調なスタートを切っている。特に目立つのは、琉球ゴールデンキングス、大阪エヴェッサ、島根スサノオマジックと西地区上位との試合が続いたアウェー5連戦を4勝1️敗と勝ち越したことだ。

昨シーズンの川崎は、アウェーで18勝12敗と思うように貯金を増やせなかった。この反省もあり、アウェーで勝ち切ることの大切さをファジーカスは強調する。「アウェーで好成績を残せるのは強いチームの証だと思います。過去のBリーグの歴史を見ても千葉Jのように、アウェーで多くの試合を勝っているチームが好成績を残しています。昨シーズン、僕たちは(アウェーで)1勝1敗が多かったです。これまで以上に敵地で勝ち星を増やすことにフォーカスしています」

また琉球、島根とここ数年に渡ってリーグ上位の強豪相手に3連勝できたのは大きな収穫だった。両チームとも外国籍の故障者など、ベストとは言えない状況だったが、「両方ともアウェーだったことを注目してほしい」とファジーカスは続ける。

「沖縄での試合は常に大変です。もしかしたら、彼らは(過密日程で)疲れていたかもしれないし、そうではないかもしれない。これは僕たちがどうこうできることではないです。どんな状況でも沖縄で勝つのは大きなこと。また、島根のアウェーゲームも簡単ではなく、沖縄とともに両方ともファンの応援がすごい。そして(ペリン)ビュフォード、(ハッサン)マーティンがいなくとも、島根は引き続き手強いチームです。2月や3月になってシーズン序盤を振り返った時、この3勝は大きな価値のあるモノだと思えるような状況にしていきたいです」

ニック・ファジーカス

ウィンブッシュとアレンの新戦力コンビ「彼らは今までいなかったタイプの選手」

アウェーでの好成績に加え、プレータイムをシェアする試合が多いのも今シーズンの川崎の特徴だ。好成績の一方で、ファジーカスのプレータイムも抑えられており、信州戦では18分28秒の出場で12得点7リバウンドを記録した。

「プレータイムをシェアできるのは、ベンチの層が厚くなっているから。これができるのは強いチームです。プレーオフに入るまで、僕が30分以上プレーする必要がない試合が増えていけたら良いことです。シーズン終盤になってもよりフレッシュな状態でいられます」

このようにファジーカスは戦力の底上げに手応えを感じている。彼を休ませる時間を増やせている主な要因は、トーマス・ウィンブッシュ、ロスコ・アレンら新戦力コンビの存在感が大きい。2人とも、力強いドライブが持ち味で攻撃の起点にもなれる。

ファジーカスも2人の優れた打開力に大きな信頼を寄せている。「トーマス、ロスコは、自らクリエイトすることができます。それが僕がコートにいない時でもオフェンスがうまくいっている理由だと思います。僕が帰化選手になってから加入したこれまでの外国籍選手と比べて、彼らは今までいなかったタイプの選手です。相手は2人をガードするのが大変だと思います」

開幕前の引退表明によりファジーカスに向けられる声援はアウェーでも大きくなっている。そのことを聞くと、ファジーカスは笑顔を見せる。
「『サンキュー、ニックさん』とアウェーのお客さんも言ってくれるのは本当にありがたいです。僕が日本バスケットボールに与えたインパクト、これまでの貢献を理解してもらえるのはうれしい。ホームのファンに比べると、アウェーのお客さんが僕のプレーを見る機会は少ないです。お客さんは相手チームの応援をしているでしょうが、それでも彼らのためにも良いパフォーマンスをしたいと強く思います」

ブレイク前最後となる今週末は、川崎で長らく名コンビを組んでいた盟友、辻直人の所属する群馬クレインサンダーズと対戦する。「辻と僕は、一緒に多くの成功を収めてきた特別な関係です。彼が川崎から移籍しても引き続き家族ぐるみの関係は続いており、僕にとって日本でのベストフレンドの1人です。今週末、レギュラーシーズンで辻と対戦するのは最後です。少しは感傷的になるかもしれないですね」

ファジーカスも辻との対戦には特別な感情を持って臨む。だが、もちろん考えているのは連勝することのみだ。「12勝2敗にして、約3週間のブレイクに入りたいです。そしてリフレッシュし、チームを成長させて12月を迎えたいです」