スコッティ・バーンズ

嘆くポポビッチ「接った展開の終盤でどう戦うか」

スパーズはビクター・ウェンバニャマを筆頭に若い逸材が揃っている。試合のたびにアグレッシブで溌剌としたプレーを見せるが、まだ粗削りで発展途上。特に試合のクロージングではしばしばもたつく。

ラプターズはそれを突いた。第4クォーター開始時点で15点のビハインドだったが、守備のプレッシャーを強め、試合のペースを上げることでスパーズのミスを誘発。ウェンバニャマにしか届かない高いボールをリム付近に放り込み、ディフェンスを引き付けた彼がタップで繋いでチャールズ・バッシーのアリウープを完成させる、という驚愕のプレーはまだ出ていたが、スパーズのリズムは少しずつ乱れていく。ギャリー・トレントJr.の3ポイントシュートで7点差となった時にグレッグ・ポポビッチはタイムアウトを取るも、そこで落ち着きを取り戻せないのが今のスパーズの悪い意味での『若さ』だ。

ここでラプターズを力強く牽引したのがスコッティ・バーンズだ。3ポイントシュートを連続でヒットさせた後、味方のシュートが外れたオフェンスリバウンドを奪ってジェレミー・ソーハンの上からダンクを叩き込む。スパーズは2度目のタイムアウトで立ち直るも、もはやラプターズの勢いは止まらない。内と外をしっかり使い分け、抜け目なくフリースローでも得点を繋ぐラプターズは、残り1分でウェンバニャマをスピードで抜き去ったダンク、そしてステップバックスリーというバーンズの連続得点でついに追い付いた。

フロスト・バンク・アリーナの満員の観客に後押しされるスパーズも意地を見せ、ルーズボールを追いかけて相手のファウルを引き出し、ケルドン・ジョンソンのフリースローで再びリードを奪うのだが、ラプターズは最後の攻めのオフェンスリバウンドを奪い、OG・アヌノビーが押し込んで同点とする。ウェンバニャマの長い腕が余裕を持ってリバウンドを確保できるところだったが、味方のジェディ・オスマンと交錯。スパーズはここでも痛恨のミスが出た。

スパーズの粘りもここまで。オーバータイムで13-6と差を付けたラプターズが、最終スコア123-116で勝利した。ラプターズは前半に11を記録したターンオーバーが後半は3つ、オーバータイムでは1つだけ。ウェンバニャマには大暴れされたが、前半は12得点6リバウンド3ブロックを食らいながら後半には4得点3リバウンド2ブロック、オーバータイムは4得点でリバウンドもブロックもなしで切り抜けた。スパーズの指揮官ポポビッチは選手たちの頑張りを称えながらも「接った展開の終盤でどう戦うか、その部分で賢さを少し欠いている」と嘆く。

30得点11リバウンド6アシスト3スティール3ブロックと攻守に大活躍したバーンズは、「前半の僕らにはエネルギーが足りなかった。ディフェンスをもっとやる、リバウンドをもっと取りに行くと決めて、それを実行した。何かを変えなきゃいけなかったけど、激しさを増したことですべてが上手く進み始めた」と語る。

ラプターズは指揮官ニック・ナースが去り、チームの顔だったフレッド・バンブリートが移籍した。バーンズは自分に託されるプレーが増えたことで、昨シーズンと比べて得点は15.3から21.3に、リバウンドは6.6から9.7に、アシストは4.8から5.8に、ブロックは0.8から2.0へと各スタッツを伸ばしている。ダブル・ダブルはすでに3回目、トリプル・ダブルもブルズ戦で記録。もともと攻守にエネルギッシュな選手だが、キャリア3年目で自分がチームを引っ張る立場になったことで、その才能を存分に発揮するようになっている。

「どんな状況でも自分のベストを尽くすだけ」というバーンズが、ラプターズを力強く牽引している。