「きっとエキサイティングなものになると思う」
NBAは新シーズン開幕で盛り上がっているが、30チームすべてがそうとは限らない。その一例がウィザーズだ。ブラッドリー・ビールとクリスタプス・ポルジンギスを放出し、補強は目玉となるジョーダン・プールでさえも前所属チームから不要とされた選手。ただ試合で勝てないだけでなく編成のマズさも何年も続いた末に、チームはどん底からの再スタートとなるのだから、ファンが愛想を尽かしても不思議ではない。
シーズン初戦、敵地でのペイサーズ戦に120-143と大敗したウィザーズは、現地10月28日にホーム開幕戦を迎えたが、2万人収容のキャピタル・ワン・アリーナには空席が目立った。昨シーズンの開幕戦は満員だっただけに、その落差は大きい。
それでもアリーナに足を運んだファンは、悪くないショーを見ることができた。前の試合で143あった失点を106まで減らし、新たなエースとなったプールが27得点、カイル・クーズマが21得点でオフェンスを引っ張り、113-106で勝利したのだ。
ディフェンスに重きを置くグリズリーズの序盤のエネルギーに押されることなく、攻守にインテンシティの強さを発揮するスタートが良かったのかもしれない。ヘッドコーチのウェス・アンセルドJr.は「前回の負けに全員が怒っていた。あんな試合はもうしないと、強い気持ちを持っていた。完璧ではなかったにせよ、ほとんどの時間帯で良いメンタリティを保っていた」と語る。
新生ウィザーズを象徴するのはジョーダン・プールだ。左コーナーからシュートを放つと、ボールが弧を描いている間にリングに背を向ける。シュートはやや短く、リムに嫌われた。それでも、ドレイモンド・グリーンに殴られてもメゲなかった彼はそう簡単には落ち込まない。スタンドには空席が目立ったにもかかわらず、試合後の会見で真っ先に「会場の良いエネルギーが僕らに力を与えてくれた」と言える度胸がある。
プールとクーズマともにフィールドゴール試投数23で、チームの総数が93だから2人で半分を放ったことになる。チームオフェンスのバランスとしては必ずしも褒められたものではないが、発展途上のチームを引っ張り、まずは結果を出してチームを落ち着かせたいとの気持ちがプールにはあった。
「僕はこのチームのカルチャーに合わせるつもりだ。チームの一員であり、カルチャーの一部であるとファンに認めてもらいたい」とプールは言う。「僕はファンからエネルギーをもらってプレーするタイプなんだ。だから少なくともホームゲームでは、観客のエネルギーを受けて試合にのめり込み、勢いに乗っていきたい。エンタテインメントとして観客が楽しめるものを提供したいとも思う」
「もちろん自分たちの望むレベルに到達するには努力が必要だ。僕らは若いチームで、開幕前のトレーニングキャンプからそれぞれが競争心を出して毎日練習してきた。そして今は一緒にプレーして、お互いにやりたいことを学んでいる。時間はかかるだろう。2、3試合、5試合、10試合と様子を見ていく。82試合の中でお互いのタイミングを測りながらプレーしていく。どこかでリズムはつかめるはずで、そうなれば本当の意味で調子が上がってくる」
「すべては現在進行形なんだ。日々の練習で努力を重ね、試合で自信を高めていく。ファンにはそれを楽しんでもらいたい。きっとエキサイティングなものになると思う」
プールに再建チームでプレーする悲壮感はない。ただこの先の成長を楽しみに、自分のベストを尽くしていくつもりだ。「良いホーム開幕戦になったと思う。新しいチームだからって卑屈にはならない。毎日戦って、強くなっていくんだ」