ラッセル・ウェストブルック

カワイも絶賛「自分勝手なプレーをしないのは明らか」

カワイ・レナードとポール・ジョージが揃った『健康体』のクリッパーズにとって、デイミアン・リラードを失って再スタートを切ったばかりのトレイルブレイザーズは相手ではなかった。現地10月25日に行われた開幕戦、クリッパーズは前半だけで20得点のリードを奪い、後半も余裕の試合運びで完勝を収めた。

ジョージが27得点、カワイが23得点と活躍。それでも、コートに立っていた時間帯の得失点差で+30と最高の数字を叩き出したのはラッセル・ウェストブルックだった。試合後の会見では、カワイもジョージもウェストブルックをひたすら称える流れとなった。

「ラス(ウェストブルック)が自分勝手なプレーをしないのは明らかだよね。彼はリムにアタックしてパスを出す。僕らはドリブルからシュートを打つよりキャッチ&シュートのほうが簡単だ。彼はペイントに飛び込み、そこで自分勝手な判断をするのではなく、オープンになった選手を見つけてボールを出す。彼は常に全力で、自分のダンクやチームメートのイージーシュートでみんなを盛り上げていく。そうやって僕らのオフェンスは機能しているんだ」

コートでのウェストブルックのプレーをカワイがこう褒めれば、ジョージはコート外での彼を称える。大差がついた後半、ウェストブルックのプレータイムは短くなったが、彼はほとんどベンチに座ることなく、立ち上がってチームメートに声援とアドバイスを送っていた。その熱意は周囲へと伝わり、気づけばニコラ・バトゥームとロバート・コビントンが彼の両隣に従って声を出していた。

ジョージは言う。「これがサンダー時代に僕が感銘を受けたラスの姿なんだ。一緒にプレーするようになってすぐ、彼のコミュニケーション能力、周りに良い影響を与えていることが分かった。彼はチームの全員と親しくなり、特別な繋がりを持てる」

開幕を前に、ウェストブルックは自分のコミュニケーション能力についてコメントしている。「僕はどんな人とでも仲良くなり、その人を理解したいタイプ」という彼によれば、チームメートと仲良くなる秘訣は「バスケの話をあまりしないこと」だ。

「家族よりも一緒にいる時間が長いから、バスケのことより人としての理解を深めたい。バスケを離れたプライベートのこと、家族や子供、信仰、何が好きで何が嫌いか、そんな会話をすることで繋がりが生まれ、仲間意識になる」

「このリーグで長くプレーして、たくさんのチームメートと出会う中で、人として、兄弟として、友人として彼らのことを学び、キャリアにおいて何をすべきで何をするべきではないかを学んできた。それは僕にとって大事な財産であり、今この時期もチームメートから学ぼうとしている」

ウェストブルックは34歳になり、16年目のシーズンを迎えたベテランだが、開幕戦の動きは年齢による衰えを微塵も感じさせなかった。もう少しエゴを出してプレーすればトリプル・ダブルも可能だっただろう。それでも彼は29得点5リバウンド13アシストというスタッツとともに、『ウェストブルック健在』を十分すぎるほどにアピールした。

彼にはチームをまとめる力がある。ワガママを封印して「チームにとって何がベストか」を自然に追求できるようになった今、爆発的な運動量にモノを言わせた個人での突破力を得点ではなくアシストに生かすことで、プレーメーカーとしても成熟してきた。

「僕はただ自分らしくプレーしているだけ。そうやって努力し、ベストを尽くしているだけなんだ」とウェストブルックは言う。「コート外で仲間と会話することで、自分自身だけじゃなくチーム全体から試合への喜びを見いだせるようになった。僕は自分だけじゃなく、チームメートの良いプレーを見るのが大好きなんだ。それが僕という人間だし、これからもそうありたい」