完成度を重視するグリズリーズの方針を体現
今オフは2020年ドラフト1巡目で指名された選手と契約延長することが出来るタイミングで、1位のアンソニー・エドワーズをはじめとした上位指名陣が大型契約を手にしました。その中で1巡目最後の30位で指名されたグリズリーズのデズモンド・ベインも5年2億700万ドル(約280億円)の高額契約にサインしています。ジャ・モラントの長期出場停止がある中で、グリズリーズのエースとしてベインには大きな期待が寄せられます。
高校時代に主要なリクルートサイトの評価に載ることはなく、大学に4年間通ったベインは1巡目指名とはいえエリート街道とは無縁の選手でした。大学4年生で平均16.6得点だった選手が、NBAでの3シーズン目で21.5得点を記録するとは、ドラフトの時点では想像もつかず、じっくりと時間をかけて伸びてきた遅咲きの選手であり、派手さはなくとも堅実さと戦術理解力の高さが目立つタイプです。
3ポイントシュート成功率はルーキーシーズンから40%を超え続け、フリースローも90%近い成功率のシュータータイプですが、昨シーズンはアシスト4.4を記録するなど、プレーメーク能力を伸ばしてきました。ダンクは6本だけとスピードやジャンプ力を欠いていますが、それでもドライブ時のフィールドゴール成功率も51%と高く、特にブロックに来るディフェンダーと距離を取るボディコンタクトとフィンガーロール系のレイアップなど、優れたフィニッシュスキルで勝負してきます。
勝利のためにスーパースター軍団を作りたがるチームが多い中で、グリズリーズは自分の役割を高いクオリティでこなし、独自の武器を持つチームプレーヤーを集めてきました。ドラフトでもポテンシャルよりも完成度を重視し、ベインはグリズリーズの方向性を体現するような選手です。
しかし、それはすべてを破壊する爆発的な突破力を持つジャ・モラントの存在があってこそ、そのスタイルはチームとして成立しているとも言えます。
今オフのグリズリーズはマーカス・スマートとデリック・ローズというリーダーシップと経験をもたらすポイントガードを補強しました。それはモラントにスコアリングの仕事に集中してもらうための補強であり、同時にモラントがいなくてもベインがエースとしてチームを牽引できるという信頼あっての補強でもあります。インサイドにはジャレン・ジャクソンJr.やスティーブン・アダムスなど人材が揃っていることもあり、モラントが不在でもベインがこれまで以上の得点力を発揮すればチームは機能するはずです。
シュート能力に課題があるモラントに対して、堅実なフィニッシュ力を発揮するベインはセカンドエースに最適な選手ですが、ファーストオプションとなれば話は変わってきます。ベインは常に優れたディフェンダーにマッチアップされることになり、タフなシュートも増えるはず。そんな状況でも得点を伸ばし、さらなるステップアップができるのか。2番手ではなく『エースとしての飛躍』が求められる4年目のシーズンが始まります。