リラード「何が起きても前に進み続けなきゃいけない」
バックスのアシスタントコーチ、テリー・ストッツが就任からわずか4カ月、開幕を待たずして辞任することになった。ヘッドコーチのエイドリアン・グリフィンが現地10月19日のメディア対応で、これを明かした。「我々全員にとって予想外の出来事だ。彼は素晴らしい人物で、短い期間だったが私は多くを学ばせてもらった」と語ったグリフィンは、辞任の理由を問われると「それは彼の個人的なものだから、彼に聞いてほしい」と言葉を濁した。
65歳のストッツはトレイルブレイザーズで9シーズンに渡りヘッドコーチを務め、2021年に退任。バックスが49歳でヘッドコーチ経験のないグリフィンをマイク・ブーデンフォルツァーの後任に据えるにあたり、経験を補うためにストッツが2年ぶりの現場復帰を果たしていた。
ディフェンスをグリフィンが、オフェンスをストッツが見るのが新生バックスの基本路線だったが、開幕を翌週に控えての突然のストッツの辞任は、バックスに小さくない影響を与えるだろう。
ストッツのことを誰よりも頼りにしていたのが、ブレイザーズでずっと一緒に戦ってきたデイミアン・リラードだ。「9年間一緒だったコーチがこのチームのオフェンスを作り上げているのは、新しい環境にやって来たばかりの僕にとって大きな助けとなる」と彼は語っていた。
そのリラードは「突然のことだったから驚いた」とコメント。ストッツから直接電話で辞任を伝えられたという彼は、こう続ける。「僕にとっては慣れ親しんだコーチで、新しい環境で落ち着けるようになった今、彼がいなくなるのは残念だ。それでも、このリーグではこういうことがしばしば起きる。何が起きても前に進み続けなきゃいけない」
ストッツはすでにチームを離れており、辞任の理由は明かされないだろう。それでも『The Athletic』はトレーニングキャンプ中にグリフィンとストッツの間に言い争いがあったと報じている。ヘッドコーチ未経験のグリフィンが責任者で、経験豊富なストッツがそのアシスタントに回る体制に、早々に齟齬が生じたのかもしれない。
バックスはリラード獲得で大いに注目を集めたが、プレシーズンゲームでは主力のプレータイムが伸びず、チームの仕上がりはあまり良いとは言えない。そこでコーチングスタッフの衝突が仮に起きていたとしても、事を荒立てることなくチームを離れたストッツの判断は賢明と言える。ベテランのクリス・ミドルトンは、暗にそれを示唆するように「彼は騒ぐことなくGMに相談した。そのやり方は尊敬できる」とコメントしている。
もっとも、大騒ぎにならないだけで問題はあるのかもしれない。リラードの反応以上に気になるのは、エースのヤニス・アデトクンボだ。彼は2カ月前、「20年も同じチームにいて一度きりしか優勝できないのは嫌だ」という言葉でフロントにプレッシャーをかけている。バックスがオフシーズンの終盤になってリラード獲得に動いたのも、このアデトクンボの発言の影響力が大きかったからだろう。彼がバックスの『本気度』を探るような発言をしたのは、ブーデンフォルツァーを解任して若いヘッドコーチを起用する方針への疑念からだったと言われるが、それが本当だとしたら今回の早すぎるストッツ辞任は間違いなくエースの心証を悪くする。