田口成浩

「まだ完璧じゃなく、伸びしろしかない」

秋田ノーザンハピネッツは島根スサノオマジックに連敗を喫し、ホームのファンに勝利を届けることができなかった。

第2戦は最終クォーターに突き放され20点差の完敗となったが、第1戦は延長に持ち込む底力を見せた。代表活動に参加していた赤穂雷太と熊谷航が今節より出場し、藤永佳昭の今後の復帰を考慮すれば明るい材料は多いと言える。そして、昨シーズンに左膝前十字靭帯断裂、大腿骨骨挫傷の大ケガを負い、シーズン後半を全休した田口成浩が元気な姿を見せたことは、クレイジーピンクにとって何よりも喜ばしいことだっただろう。

それは田口自身も同じ気持ちだ。「本当に楽しかったです。出た瞬間に決めれましたし、アドレナリンが出ていました。歓声はグッとくるものがありました。この歓声を聞くために、リハビリを耐え抜いてきたので」。久しぶりのホームでの公式戦を終えた田口はそうファンへの思いを口にした。

第1戦の田口はベンチから出場した直後に3ポイントシュートを沈めると、その後もカットプレーからのフローターを2本決め、28-14のロケットスタートに大きく貢献。試合を通して、3本の3ポイントシュートを含むチームハイ(タイ)の17得点を挙げた。

もともとシュート力には定評があるが、リング付近でのフィニッシュ力も高かっただけに、完全復活を印象づけた。田口は「引き出しを閉めていたので、今その引き出しを開け始めたところです」と冗談交じりに言う。「感覚は良かったです。レイアップも2本決めたし、ミドルも決めて、ピック&ロールからの3ポイントシュートも決めることができました。もっといろんな引き出しを開けて、精度を高めることが求められるので。まだ完璧じゃなく、伸びしろしかないなと感じています」

そして、伸びしろがあるのはチームも一緒だと言う。「航のプレーメークとか雷太のフィジカルや高さが加わって、また味が変わってきているとあらためて感じました。彼らの良いところと今までいた選手の良いところを含めてコーチ陣がプランを組んでいます。それをコートで表現できたのが第1クォーターで、それができなかったのが第2クォーターでした。チームで動けば一人ひとりの良さが出てきます。コーチ陣のプランをどれだけコートで遂行できるかというところで、そこは伸びしろかなと思っています」

田口成浩

「一番楽しいのは勝った時」

田口が言うように、すべてが噛み合った時の破壊力は高く、第1クォーターは14点ものリードを奪った。しかし、第2クォーターは悪循環に陥り、そのリードのほとんどを手放した。どんなチームも良い時と悪い時の時間帯があるが、前田顕蔵ヘッドコーチは「僕たちはスピートがなくなった時に弱いと思っている」と、現在の課題をこのように分析した。

「ボールが停滞してしまい、走れない。前半に悪くなった時間帯は特にリバウンドが取れず、そこからスピードに乗れずに組み立てばかりになって重くなってしまう。メンバーが増えて、ペースやインテンシティが落ちやすい状態になっているので、常に速い展開に持って行けるようなチームにしたいと思っています」

激しいディフェンスからのトランジションが秋田の真骨頂。これがハマれば、どんな強豪が相手でもチームは勝てると信じている。田口はホームでのプレーを「楽しい」と言ったが、「一番楽しいのは勝った時。惜しい展開だと意味がないので、勝ち切れなかったことが本当に悔しいです」とも語った。

新戦力がフィットし、自身のパフォーマンスも上がっていけば、自ずと結果は出るはず。リハビリを乗り越えホームに戻ってきた彼が、心から楽しめる日がやって来るのは、そう遠くなさそうだ。