「彼のリクエストを受けてステップを踏んできた」
今夏のFIBAワールドカップ2023で、フランス代表は初戦でカナダに30点差の大敗を喫するとそのまま立て直すことができず、まさかのグループリーグ敗退で18位に終わった。前回のワールドカップ2019は銅メダル、東京オリンピックとユーロバスケット2022は銀メダルと近年の主要大会では常に上位の成績を収めてきたが、最も重要な大会である来年のパリオリンピックを前にして急ブレーキと大きな危機に陥っている。
NBAでのルーキーシーズンの準備を優先し、ワールドカップを欠場したビクター・ウェンバニャマはパリオリンピックに出場予定だが、まだ10代の彼に立て直しの切り札として多くを求めるのは酷だ。だからこそ、NBA随一のビッグマンであるジョエル・エンビードに、救世主としての代表入りを望む声はより大きくなっていた。
しかし、最終的にエンビードはフランス、カメルーン、アメリカという3つの選択肢の中からアメリカ代表としてのオリンピック出場を選んだ。フランス側としてはエンビードの決断を尊重するしかないが、代表入りについてアメリカより早くから行動を起こしており、やりきれない思いがあるのも事実だ。フランスバスケットボール協会のジーン・ピエール・シウタ会長は同国のスポーツ紙『レキップ』の取材に対し、そもそも代表入りについての連絡を最初に取ってきたのはエンビード側だったと明かす。
「彼(エンビード)とは2022年3月にボリス・ディアウ(代表GM)と一緒の夕食で会った。私たちは彼の代表入りを模索したことも要請したこともない。彼のリクエストを受けて、私たちは代表入りに向けてステップを踏んできた。決して実現しない出来事に多くの時間と労力を費やしたことに失望している。この件はもう過去のことだ」
エンビードは、息子がアメリカ人であることをアメリカ代表入りの一番の理由に挙げている。そうなると会長が指摘したように、フランス代表入りの可能性は最初からなかったことになり、憤りたく気持ちも分かる。パリオリンピックで復活なるのか、フランス代表は正念場を迎えている。