ジェームズ・ハーデン

フロントはクリッパーズとのトレード交渉を再開?

チーム始動の月曜は主にメディア対応、火曜が実質的なチームトレーニングの初日。契約延長を巡ってフロントと衝突したジェームズ・ハーデンはこの2日を欠席した後、水曜のチーム練習に加わった。身体は絞れており、動きもまずまず。トレード要求で大騒ぎのオフとなったが、バスケ選手としての準備は整っているようだ。

ハーデンがチームメートに対して悪い感情を持っているわけではないことは、練習に取り組む姿勢や談笑する様子から見て取れる。ハーデンはトレード要求などなかったように明るく振る舞い、多くの選手と会話をかわし、チーム練習が終わった後はタイリース・マクシーと居残りのシューティングに励んだ。

彼はトレード要求を取り下げておらず、夏の間に一度は交渉がまとまらなかったクリッパーズとの交渉が再びスタートしたとの情報もある。ただ、ここまで成立しなかったトレードが、この段階になって急にまとまるとすれば、シクサーズが大幅な譲歩をした場合のみ。しかし、ダリル・モーリー球団社長にそのつもりはない。かつてベン・シモンズが同じような状況にあった場合も、彼はシクサーズに利益となる条件が出てくるまでトレードには応じなかった。

そして、明らかに見返りの少ないトレードに応じてしまえば、大型補強を行った東カンファレンスのライバル、バックスやセルティックスに差を付けられることになる。ジョエル・エンビードは「失われたシーズンがあってはならない」と、フロントに対する牽制とも取れる発言をしている。彼を擁するシクサーズは常に優勝が狙えるチームであり続けなければならず、そう簡単に『損切り』はできない。

その一方で、ドック・リバースからニック・ナースへの指揮官交代により、シクサーズのバスケは大きく変わりそうだ。昨シーズンまではハーデンとエンビードのピック&ロールがすべてのオフェンスの起点となったが、これからはオフボールムーブが重視され、ポジションレス、より走るバスケが導入される。

機動力のあるタイプではないエンビードが、これを一番歓迎しているのはポジティブな驚きだ。「ボールが左右に動いて全員でプレーするのは楽しい。全員が自分の仕事をするバスケが好きだ」と彼は言う。

しかし、ここにハーデンをどう組み込むかは難しい。ロケッツ時代のように速いペースのバスケには対応できるだろうが、彼をチームの中心に据えてもどこかのタイミングでトレードになれば、ケミストリーは作り直しになる。開幕までにトレードになるのか、トレードの選択肢が増える12月まで、あるいは2月のトレードデッドラインまではひとまず残留するのか。ニック・ナースとしては新しいチームにやって来てすぐ、想定外のトラブルに直面したことになる。

簡単な解決策は、ハーデンをセカンドユニットに置くことだろう。タイミングがいつであれ、いずれハーデンの後釜としてチームの司令塔となるタイリース・マクシーに多くの役割を任せ、新加入のケリー・ウーブレイJr.と組ませ、ナースのバスケを浸透させる。ハーデンはセカンドユニットのオフェンスを引っ張る。エンビードとのツーメンゲームは相変わらず強力だろうし、走るバスケとのメリハリも効く。彼がその役割を受け入れるのが大前提となるが、自分の価値を落とすことなくチームにもメリットをもたらす方法だ。

現地8日にはボストンでセルティックスとのプレシーズンゲームが行われる。指揮官ナースはまだどのメンバーを起用するか決めておらず、ハーデンについても「まだまだ練習で激しく追い込む時期だし、それぞれコンディションも違うから、その様子を見てからだ」とプレーさせるかどうかの明言を避けた。ハーデンが前向きな態度でトレーニングキャンプに加わったことでチームの雰囲気は良くなっているが、問題はただ先送りされただけで、解決してはいない。