デリック・ローズ

「自分がどんな道を通って来たかを伝えるつもりだ」

デリック・ローズは35歳になり、グリズリーズと2年契約を結んでメンフィスに戻って来た。ここで彼に掛けられる言葉は「ようこそ」ではなく「おかえり」だ。ここの人々にとってローズは今も、2008年のNCAAトーナメントでファイナル進出を果たしたメンフィス大のスーパースターなのだ。

「ここに戻って来るのはかなりクールだ」とローズはうれしそうな表情で語る。「だけど、実際にプレーするまで本当の感覚は分からないだろうな」

彼がNBAのシーズンMVPを受賞したのはブルズ時代の2011年のこと。膝を壊したことでプレーヤーとしての全盛期はとうに過ぎているが、それでもなおローズはNBAで存在感を放ち続けている。「昨シーズンはほとんどプレーしていないから身体を温存することができた。その分まで自分を表現して、若い選手たちと一緒に成長したかった。自分自身に挑戦したいし、もっと声を上げていきたい」

グリズリーズは若きエース、ジャ・モラントのチームだ。しかし彼は銃にまつわるトラブルを再三起こし、開幕から25試合の長期出場停止を科せられている。爆発的な身体能力と不屈の闘志を兼ね備え、リムへと勢い良く突進して得点を奪う豪快なプレーの数々は、若い頃のローズを彷彿とさせる。そしてローズも若い頃は血の気が多かったが、様々な経験を経て精神的に成熟し、長いキャリアを築いている。

ローズの加入が決まった時点で、グリズリーズのファンはモラントのメンターとしての期待を寄せた。それでもローズは、すでにモラントとは連絡を取ったと明かし、リーダーとしてチームを引っ張る意欲は見せながらも「僕は子守りじゃない」と言う。

「ベビーシッターじゃないし、ロッカールームの観葉植物でもない。勝つために、若い選手たちを勝たせるためにここにいる。そして、自分がまだ多くを残していると証明するためにここにいるんだ」

モラントには「僕は子守りじゃないから、君の後をついて回ったりはしない。ただ、必要な時に背中を押す」と伝えたそうだ。

「多くの人が彼のプレーを見て、かつての僕に似ていると言う。NBAで同じプレースタイルというのは珍しいよね。でも彼は全く別のレベルにいる。彼の背中を押し、何か無茶なことをやろうとしたら落ち着かせるのが僕の役目だ」

「キャリアには3つの時期がある。良い時期、悪い時期、最悪の時期だ。その3つを乗り越え、それでもバスケへの情熱や愛情を持ち続けていられるのなら、それは正しい道を歩んでいることを意味する。僕は彼にそれを望みたい。そして自分がどんな道を通って来たかを伝えるつもりだ。僕はかつて、自分の身体の声を無視した。ケガからの復帰を急いだ。その代償は大きかったけど、自分自身を知ることができたおかげで今ここにいる。それは幸せなことだ」