福澤晃平

王座奪還を目指すアルバルク東京は今オフに積極的な補強を敢行。その期待の新戦力の1人が福澤晃平だ。リーグ随一のタレント集団であるA東京の選手たちは、学生時代から世代屈指の選手として脚光を浴びてきたメンバーばかりだが、福澤は真逆のキャリアを歩んできた。爆発力のある3ポイントシュートを武器に評価を高め、節目の30歳に大きな飛躍のチャンスを得た彼に新シーズンへの意気込みを聞いた。

出番獲得へ「自分の何が通用して足りないのかを理解し、努力を積み重ねていく以外にない」

――今オフ、いろいろな選択肢があったと思いますが、その中でアルバルク東京を新天地に選んだ理由を教えてください。

まず、オファーをいただけるとは思っていなくて最初は驚きました。アルバルクはこれまでリーグ優勝2回など素晴らしい結果を残していて、自分がリーグを代表するトップチームの一員としてふさわしいレベルなのか、というのが正直な気持ちとしてありました。今回は移籍するにあたり、環境を大きく変えたい気持ちがありました。アルバルクはチームメートが代表経験者ばかりで、毎日死に物狂いでやって試合に出るチャンスをつかめるかどうかだということは分かっています。でも、そういう厳しい環境に身を置くからこそ日々ステップアップできますし、僕の性格に合っていると思いました。

それに自分がプレータイムをもらえるか不安はありますが、どこに移籍するにしても、信頼を少しずつ得ていくことで試合に出られる過程は一緒です。また、これまでリーグのアンケートなどでもずっと一緒にプレーにしたい選手に東海大三高(現・東海大諏訪)の先輩であるザック(バランスキー)さんをずっと挙げていたので、それが現実になるのもうれしいですね。

――GMやコーチからは、特にどんな役割を期待していると言われていますか。

対戦相手として、アルバルクはスペーシングが整理されノーマークを作るのがうまいチームと見ていました。ノーマークの時にしっかり決め切らないといけないので、ここまで35%以上の3ポイントシュート成功率をずっと記録している強みを生かしてほしい。また、3番手になりますが、ポイントガードもやってほしいと言ってもらいました。これまでシューターとしてプレーしてきましたが、僕の身長(177cm)だとポイントガードをできるようにならないと、この先で生き残るのは厳しいと思っているので自分としてもありがたいです。スキルコーチのサポートを受けつつ、司令塔の技術を身につけているところです。

――天皇杯2次ラウンドのファイティングイーグルス名古屋戦で出場機会がありませんでした。試合に簡単に出られないことは予想していたと言っても、メンタル的にキツくはなかったですか。

今シーズンがプロ8年目でこれまでいろいろな経験をしてきて、昨シーズンもあまり試合に出られない時期がありました。もちろん悔しさはありますが、そんな簡単にプレータイムを獲得できるとは思っていなかったので、取り乱すようなことはなかったです。それに落ち込んで下を向いても仕方ないですし、今の自分はヘッドコーチからそういう評価だと受け入れることが大事。そして急にうまくなることはないので、練習から自分の何が通用して何が足りないのかをしっかりと理解し、努力を積み重ねていく以外にないと思います。

福澤晃平

「7年前の自分に、今アルバルク東京でプレーしていると言っても信じない」

――評価を高めて試合に出るには今、特に何が必要だと考えていますか。

これが正解なのか、本当のところは分からないですけど、ディフェンスだと思います。2番で出ることが多いですが、同じポジションの小酒部(泰暉)選手、安藤(周人)選手は190cm前後の身長で、フィジカルも強いです。練習でマッチアップすると2人の方が、ディフェンスが安定しています。僕を試合に出して、ディフェンス面で大丈夫とコーチに思われるようにならないといけないと思います。

また、練習中に自分の良さを出せない時がまだまだあります。味方にすごい選手がいるからと消極的なプレーをした結果、ミスに繋がってしまう。自分の強みは思い切りの良いプレーです。それを出せなくて、後で家に帰って映像を見たりすると「なんでこういう選択をしたんだろう……」と弱気になっている自分に腹が立ちます。こういうプレーはなくさないといけないです。

――冒頭での「アルバルクの一員としてふさわしいレベルなのか」という発言など、福澤選手はとても謙虚なコメントが多いです。2シーズン前にはB1で平均12.2得点と確固たる実績も残していますが、昔からそういう考え方でしたか。

そもそも僕は関西大学と、(大学トップレベルで多くのBリーガーを輩出する)関東一部の出身ではありません。そして4年生の時、チームは関西リーグの二部でした。卒業後の進路を決めないといけない時、お金の面ではかなり現実的な考え方を持っていたので、関西二部でトップ選手ではない自分がプロバスケットボール選手になって生きていけるのかという不安を持っていました。企業に就職して、働きながらバスケットボールをプレーするのがベストだと考えたこともあります。

学生時代の僕を見てプロ選手として長くプレーできたり、B1でプレーするのは難しいと思う人たちが大半なはずです。7年前の自分に、今アルバルク東京でプレーしていると言っても信じないです。それを考えると今、こうしてプロバスケ選手として生活できているのは充実というより、奇跡と言える程に恵まれているなと。自分の好きなバスケをやってお金をもらえているのは本当に幸運だと思っています。

――過去のことを考えると、プロ選手としてキャリアを積み重ねていること。またB1のトップチームであるA東京の一員になったことである種の達成感なり、満足感を得たりしませんか。

これまでタイトルを取ったとか、何か大きな結果を残してもいないので、満足したことはないです。これまで順風満帆なキャリアを送ってきた訳ではないですし、実際に7年前からB1でのプレーを目指していましたが、その機会をつかむのに5年かかりました。ただ、常に上手くなりたい気持ちを持ち続けていました。アルバルクに入団できたことは、ここまで積み重ねてきたことが間違っていない、自分はまだまだ頑張れるという思いになります。そして、今壁にぶつかっているのは事実なので、満足することはできないですし、折れることなく毎日、大事に過ごしていきたいです。

バスケットボールに限らずですが、できないことができるようになるとすごくうれしい。例えばフローターシュートは難しいですけど、それが練習でまず決まるようになり、実際の試合でも入るようになる。こういう段階を踏んでいく成功体験が好きです。これを積み重ねていくのが楽しいですし、自分より上手い選手はたくさんいるので満足することはないです。

また、学生時代から活躍してきたエリートではなく、身体能力も高くない自分が、B1のトップチームで試合に出て活躍することで、子どもたちにあきらめずに頑張ったら結果を出せると思ってもらいたい、そういう目標もあります。まだ、結果を出せていないので、もっと頑張らないといけないと思っています。

――最後になりますが、ファンの皆さんにメッセージをお願いします。

自分にできることを全力でやります。試合に出て勝利に貢献したいですが、例え試合に出られなくてもベンチでチームのためにできることはたくさんあります。何よりもチームが勝つことが一番なので、どんな形でも自分に与えられた役割を全うしていきたいです。そしてリーグ優勝するために皆さんの力を貸してほしいです。応援よろしくお願いします。