ジョエル・エンビード

「誰がチームにいてもいなくても優勝のチャンスがある」

NBAの長いシーズンには良いことも悪いことも起こるものだが、少なくともシーズン始動の日はチームの全員が笑顔で肩を抱き合い、期待を胸に抱いてスタートを切る。しかし、セブンティシクサーズの始動はそうならなかった。ジェームズ・ハーデンが姿を現さなかったのだ。

契約延長を巡ってハーデンと衝突し、この事態の当事者となったダリル・モーリー球団社長は、「彼は今日ここに来ていない。彼はトレードを要求しており、我々は彼のエージェントとともに解決すべく動いている」と言い、「願わくば、全員にとって最善の方法でね」と付け加えた。

このオフを通じて続いたこのトラブルについて、モーリーは「キツかった」と心境を明かすとともに、ハーデンが彼について語った「嘘つき」は事実ではないと釈明した。「彼がそう発言するのが正しいと考えたこと自体が私にとってはつらい。このリーグでの20年間、私が常にルールに従って働いてきたことはエージェントもリーグの人間もみんな知っている。そうじゃなければこの仕事は務まらない」

エースのジョエル・エンビードは、この問題について「今回は2人の間に行き違いがあったと思う」とコメントするも「でも僕がコントロールできるのは、今いるメンバーで戦うこと、リーダーとしてみんなを引っ張っていくことだ。誰がチームにいてもいなくても、優勝するチャンスがあると信じている」と、それ以上は踏み込まなかった。

ここからハーデン問題をどう解決すべきかについても「それはフロントの仕事であって、僕は任せている。もし意見を求められれば発言するかもしれないけど、僕は上手くいくと信じて、ただ勝とうとするだけだ」と語るに留めた。

この数日間でデイミアン・リラードのバックス移籍があり、ドリュー・ホリデーがセルティックスにトレードされ、東カンファレンスの覇権を争うライバルが大幅な戦力アップを実現した。シクサーズにはビッグネームの補強がなく、ハーデン問題も解決せずに、ライバルに置いていかれた形だが、エンビードは「どこが僕たちを超えたって?」とそれを認めない。「僕らはコートで競い合うんだ。コートの外で何をしようが勝手だけど、結局はコート上で戦い、ボールをフープに入れなきゃいけない」

しかし、シクサーズの状況はやはりポジティブなものとは言えない。ニック・ナースを新たなヘッドコーチに迎えてスタートを切るこのタイミングで、エンビードに次ぐ重要な選手の去就が決まっていない。

ハーデンはロケッツを離れた2年前にも同じようなトラブルを経て移籍している。その時をロケッツの一員として経験しているダニュエル・ハウスJr.は達観した表情でこう言う。「彼が戻って来るかどうか、それは僕に答えられることじゃない。僕には分からない。すぐに解決してほしいけど、そうならなかったらその時のことさ」